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今、猫の人気が急上昇しているらしい。
今までペットNo.1だった犬の地位を脅かすくらいの人気なのだとか。

ちなみに、オス猫の名前の人気ランキングは
1位レオ
2位ソラ
3位コタロウ
だそうだ。


「根武谷がいないな」

「永吉先輩がいないね」

征くんは棋譜を片手に一人で将棋をさしている。
私はベッドを背にして座り、雑誌を広げていた。

こんな風に私達は同じ空間にいても、別々の事をしていることが多い。
彼が将棋を指している間、私は雑誌を捲ったり、勉強をしたりしている。
相手の存在が感じとれる距離で、同じ空間にいる事が重要なのだ。

学校でもいつもべったりというわけではないし、かと言って放置されているわけでもない。
別々の場所でそれぞれ何か別の事をしていることもあるが、一緒にいたいなと思う時には自然と傍にいる感じだ。
もしもお互いの気持ちやタイミングにすれ違いがあったら、きっともっと悩んでいたのだろうと思う。

ぱちり。

征くんが盤上に駒を置く音が響く。
この音が好きだ。
帝光にいた頃は、緑間くんと対戦しているのを静かに見守っている時間が好きだった。

読んでいた雑誌を閉じて立ち上がる。

「お茶淹れてくるね」

「いや、後でいい。それより」

腕を引かれて征くんの胸の中へ。
膝の上に抱かれて、彼の整った顔を見上げた。

「こっちの補給が先だ」

「ん…」

瞳を閉じてキスを受け入れる。
征くんのキスは優しい。けれども、それは最初だけだ。
次第に深く、情熱的になってきて、舌を絡め、吸われて、息があがる頃には獰猛ささえ感じられるほどだった。

「このまま…いいか?」

「うん」

わざわざ聞かれなくても私に否やはない。
征くんが首筋に吸い付いてくる。

「痕残したらダメだよ」

「さて。どうするかな」

「もう…意地悪しないで」

この前、首筋にくっきり赤い痕をつけられてしまい、玲央先輩にからかわれたのだ。
微笑ましい、といった風に見守ってくれている玲央先輩だけど、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。

「実渕のことなら気にするな」

「気にするよ…あ、んッ、だめ」

今、絶対痕がついた。

確認しようと、そこへ手を伸ばそうとしたら、その手を取られて、手の甲に恭しく口付けられた。

「俺は存外嫉妬深い男だったらしい」

「…うん、知ってる」

「お前が実渕達と楽しそうに話しているのを見るだけで、妬けてくるよ」

「私は征くんのものなのに?」

「そうだ」

征くんの赤い赤い瞳が私を捉える。
心を鷲掴みにされるような錯覚を覚えるほどに、強く、熱い眼差しに、胸とお腹の奥がとくんと疼いた。

「いっそ、誰の目にも触れないようにお前を閉じ込めてしまいたいと思う、と言ったらどうする?」

「いいよ」

私は征くんの首に腕を回して彼の身体を抱きしめた。
未だ成長途中にある、大人の男へと変わりつつある身体。
私を少女から女へと変えた身体。

「征くんになら、閉じ込められてもいいよ」

「お前がそうやって俺を甘やかすから、俺の欲望はとめどなく育っていくんだ」

征くんは苦笑したけれども、さっきのは私の本心だった。

「愛している、七海」

「私も」

ふわりと抱き上げられて、ベッドの上へと優しく降ろされる。
覆い被さってくる征くんの身体を、私は両手を広げて受け止めた。


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