オーブンから良い香りが漂ってきている。 今日はガトーショコラを焼いているのだ。 ちょっと様子を見に行こうとしたら、玲央ちゃんにまだダメよと引き止められた。 「あと20分は焼かないと」 私のベッドに座っている玲央ちゃんは、下だけを穿いていて上半身は裸のままだ。 えっちなことをした後なので。 「だから、いらっしゃい、七海」 甘い声に誘われて近づくと、腕を引かれてベッドの中へ。 二人で寝転がって玲央ちゃんにゆるく抱きしめられる。 その手が、指が、そっと優しく触れてきた。 首筋を滑り、鎖骨をなぞって、胸をやんわりと揉んだかと思うと、喉元まで撫で上げられる。 その間、玲央ちゃんは私の頬や耳たぶ、そして唇に触れるだけのキスを落としていった。 背中を撫でる手があんまり気持ちがよくて、玲央ちゃんの腕の中でとろとろと蕩けてしまいそうになる。 「気持ちいい…」 「そう?良かった」 と、玲央ちゃんは綺麗に微笑んで、唇にキスをひとつ。 「こういうことは、シた後のほうが大事だから」 「そうなの?」 「そうよ」 「玲央ちゃん、なんでそんなに詳しいの…」 「そうねぇ…私が男で、七海が女の子だからかしら」 「答えになってないよお」 うふふ、と玲央ちゃんが上品に笑う。 「貴女が気持ちがいいと私も嬉しいということよ」 「玲央ちゃんも?気持ち良かった?」 「ええ、とっても」 「私、玲央ちゃんが初めてだからよくわからないけど、ちゃんと出来てる?」 「そんなこと心配しなくていいのよ」 「でも私も玲央ちゃんにもっと気持ち良くなってもらいたい」 「ありがとう。そう言ってくれるだけで十分嬉しいわ」 「本当?満足出来てる?」 「あら、私の言葉が信じられない?」 「ううん…」 「少しずつでいいのよ。私がちゃんと順番に教えてあげる。だから心配しないで」 「……うん」 うまく言いくるめられたような気もするけど、玲央ちゃんがいいと言うならよしとしよう。 こういう時、玲央ちゃんはびっくりするほど男らしい。 それでまたドキドキして惚れなおしてしまうのだ。 「そろそろいい頃合いね」 玲央ちゃんが私を抱えたまま起き上がる。 そしてそのままベッドを降りた。 玲央ちゃんは大きい。 バスケをやっているから、身長もだけど、身体つきががっしりしている。 玲央ちゃんにとっては私を抱き上げたまま歩くぐらい、ドリブルより簡単なことなんだろう。 キッチンへ行くと、玲央ちゃんは私を椅子の上に降ろして、オーブンを開けた。 手袋をして中身を取り出し、テーブルの上に置いて確認する。 「味見してもいい?」 「火傷しないようにね」 小さくカットしたガトーショコラを口に運んでくれたので、ふうふうと吹き冷ましてからそれを食べる。 「美味しい!」 さすが玲央ちゃん。 お菓子作りが得意だというだけあって、まるでパティシエみたいだ。 「私はこっちのほうが甘くて好きだけど」 そう笑って、玲央ちゃんは私にキスをした。 どっちのほうが甘くて美味しいかなんて、それはもちろん玲央ちゃんのガトーショコラのほうに決まってる。 でも、キスをする玲央ちゃんは何だかとても幸せそうだから、まあいいかと目を閉じた。 玲央ちゃんが幸せなら私も幸せだから。 |