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「本当にこんなものでいいのか?」

「うん、お願い」

真剣に頼む私を見て征くんは苦笑したけれど、どうしてもこれがいいのだ。
だから、ヴァイオリンを構えた征くんが弓を弦に当てた時には、嬉しくて舞い上がってしまいそうになった。

私のためだけのリサイタル。

静かに流れ始めた『G線上のアリア』に、目を閉じてうっとりと聞き入る。
本当になんでも器用にこなしてしまう人だ。
お父様による英才教育の一つとして小さい頃から習わされてきたから一通り弾けるだけだと本人は大したことないみたいに言うけれど、十分凄い。
まるでプロみたいだ。

演奏が終わると私は惜しみない拍手を贈った。

「ありがとう、征くん」

「どういたしまして」

ふ、と笑った征くんがヴァイオリンを置く。
そして、テーブルの上から小さな箱を取った。

「だが、やはり、俺としてはきちんと贈り物をさせてほしいな」

「えっ」

「誕生日おめでとう、七海」

箱にかかっていたリボンをしゅるりと解いて、箱の蓋を開けて私に差し出す。

「指輪…?」

「ああ。受け取ってほしい」

「いいの?そういう意味だと思っちゃうよ」

「構わない。そういう意味だからね」

「ありがとう…凄く嬉しい…」

征くんが指輪を嵌めてくれる。
左手の薬指に滑り込んだそれは、ひんやりとした感触とともにそこに落ち着いた。

「これは予約だ」

「うん」

「お前を俺に繋ぎとめるための」

「うん」

「何があっても逃しはしない。逃してやらないよ」

「うん」

優しい腕に引き寄せられて抱きしめられる。
私も彼の背中に手を回して抱きしめ返した。

「ずっと一緒にいよう」

「うん、絶対に離さないで」

「愛している、七海」

「私も」


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HappyBirthday to you

楽園より愛をこめて


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