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二重瞼の人が羨ましい。
アイプチやテープはかぶれてしまうし、整形なんてとてもじゃないが怖くて出来ない。
マッサージなど色々試してみたけれど駄目だった。

「泣かないで。可愛い顔が台無しよ」

「可愛くなんてない。玲央くんには私の気持ちはわからないよ。だってとっても綺麗だもん」

「…困ったわねぇ」

玲央くんは困ったように微笑んで私の背中を撫でてくれた。
優しくしないで。
勘違いしてしまう。

花も恥じらう美人の隣なんて、私は相応しくない。

「それを決めるのはあなたじゃないわ」

「…私まだ何も言ってない」

「あなたの考えていることくらいわかるわよ」

玲央くんは綺麗な上に聡明だ。
私は溜め息をついた。
どうしてこんな凄い人がまだ私を見捨てずにいるのだろう。

「ねえ、私を見て」

首を振ると、頬を包み込まれて顔を上げさせられる。
瞼にキスをされてびっくりして目を開ければ、綺麗に微笑む玲央くんの顔が至近距離にあった。

「好きよ、七海」

「玲央くん…?」

「お願いだから私の好きな子のことを悪く言わないで」

「でも、私…」

「そんなに自信がないなら、私が魔法をかけてあげる」

まずはその腫れた目元を何とかしないとね。
玲央くんはそう言って冷たい濡れタオルを持って来てくれた。
それでしばらく顔を冷やすと、泣いたせいでむくんだ顔が少し落ち着いてきた。

すると、今度は化粧水を染み込ませたコットンで丁寧に顔を押さえる。
全体にまんべんなく行き渡ったら、続いて乳液をのばしていく。

「敏感肌用のだから痛くないでしょ?」

「うん、痒くない」

それから化粧下地を薄くのばして塗ってファンデを塗り重ね、その上からパウダーをはたいた。
アイホールとTゾーンにちょんちょんと濃いめのファンデを乗せて、指でよくなじませる。

玲央くんの指はまるで魔法の指だ。
顔の上を滑る指先がとても気持ちがいい。
うっとりとなっている内に、アイライン、アイシャドウが終わっていた。

頬にチークを入れ、最後に、口紅、リップクリーム、グロスの順に唇に塗ってから、玲央くんは私に鏡を差し出してきた。

「完成よ。見てごらんなさい」

恐る恐る鏡を覗き込むと、私に似た、でもびっくりするくらい可愛い顔が映っていた。

「女の子はね、やり方さえ知っていれば誰だって可愛くなれるの」

「まるで別人みたい…」

「いいえ、私の可愛い七海よ。あなたは素材がいいからメイクのしがいがあるわ」

信じられない思いで鏡を覗き込んでいると、玲央くんがブラシで髪を梳かしてハーフアップにしてくれる。
そうすると、顔のラインがすっきりしてメイクされた顔が際立って見えた。

「もしまた自信がなくなったら、何度だって私が魔法をかけてあげる。男は、好きな子のためなら魔法使いになれるのよ」

男は、と玲央くんは言ったけれど、私には彼が特別な存在に思えた。
そう思ってしまうのは私が玲央くんを好きだからかもしれない。

「だから、私の側から離れないで」

「…うん」

まだ少し不安はあったものの、玲央くんに抱き締められると、それはたちまち氷のように解けていった。

玲央くんは本当に魔法使いのようだ。

彼のお陰でほんの少しだけ自分のことが好きになれた。
これから少しずつでも努力していこうと思う。
私を好きだと言ってくれた大好きな玲央くんに相応しい女の子になれるように。


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