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実家の近くに、小さい頃に幼なじみの征くんとよく遊んだ公園がある。

箱型ブランコやジャングルジムなど昔懐かしの遊具が揃っていたのだが、時代の波には逆らえなかったのか、ついに最新の遊具への入れ替えが行われることに決まったらしい。

春休みで東京に戻ってきていたので、せっかくだからと二人で行ってみることにした。

「わあ、懐かしいね」

「ああ。まだ昔のまま残っていたんだな」

「あのブランコ、どっちが高く漕げるか競争したね」

「そう、俺もよく覚えてるよ」

「結局一度も征くんには勝てなかったなあ」

「君が泣くから、俺は宥めるのが大変だった」

「ごめんね」

あの頃はまだ征くんのお母さんが生きていて、遊具で遊ぶ私達を優しく見守ってくれていたのを思い出す。

もし、お母さんがまだ生きていたら、征くんはもっと息がしやすかったかもしれない。
お父さんとの関係が息苦しいと感じている自覚が本人にあるかわからないけれど。

今も昔も、私が彼にしてあげられることなどたかが知れている。

昔は勉強漬けにされていた征くんを遊びに連れ出していたが、今の私はちゃんと役に立てているだろうか。

「この箱型ブランコでもよく遊んだね」

かなり古くなってしまっている箱型ブランコに腰を下ろす。

「私がお姫様で、征くんが王子様で…二人で舞踏会に行く馬車だったんだよね」

懐かしく思いながらブランコを漕ぐと、征くんがクスッと笑った。

「可愛いな」

「えっ」

「誰にもとられないように閉じ込めてしまいたくなる」

「ええっ」

征くんは「冗談だよ」と笑ったけれど、今のは本気の声音だった。
長い付き合いだからわかる。

「俺の気持ちは昔から変わらないよ」

「征くん…」

「君が好きだ。これからもずっと俺の側にいてくれ」

「うん…うん、もちろん」

「ありがとう」

征くんに手を取られてブランコから降りる。

年月が経ったとしても、変わらないものが確かにあるのだと感じながら。


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