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「おはよう、七海」
「おはよう、七海」

全く同じタイミングで同じ声が左右から聞こえてくる。まるでステレオサウンドだ。

“俺”と“僕”の二人の赤司くん。
姿形はそっくりだけど、性格は微妙に違うらしい。
身体に巻き付いている腕は“僕”のほうの赤司くんのかな。
それで腕枕をしてくれているほうが…あっ、

「ごめんね、腕痺れてない?」

「いや、大丈夫だ」

やっぱりこっちが“俺”のほうの赤司くんだ。
私が起き上がると二人もそれぞれ身体を起こした。

「それより身体は大丈夫かい?」

「昨日は無理をさせてしまったからね」

そうだ。
昨夜は……凄かった。
何しろ二倍なので。

「大丈夫だよ、朝ごはんの支度…ってもうお昼近いからブランチになっちゃうけど、いま用意するね」

「俺が作るから、君はシャワーを浴びてくるといい」

「え、いいの?」

「良くなければ言わないよ」

ふっと笑った赤司くんはもう既にベッドから降りてキッチンの棚を開けている。

「パスタはあったな。冷蔵庫の中の食材を使っても構わないか?」

「うん、勿論。何でも好きなものを使って」

「話は決まったね。じゃあ行こうか、七海」

「えっ、ひゃあっ」

思わず変な声が出てしまった。
“僕”の赤司くんが私を抱き上げたからだ。
お姫様抱っこされている。

「シャワーを浴びるんだろう?僕が洗ってあげるよ」

「ええっ」

「綺麗にしてさっぱりしよう。さあ、行くよ」

「え、あ、ちょっと、まっ」

「待たない」

赤司くんは私を抱えて浴室へ歩いていく。
後ろから「手は出すんじゃないぞ」と釘を刺す赤司くんの声が聞こえてきた。

「わかっているよ。食後の運動だろう」

「ああ。食事の後だ」

あああああ!!
私は恥ずかしさのあまり両手で顔を覆った。
それでも声は聞こえてくる。

「愛してるよ、七海」

「僕達二人の愛をたっぷり味わってくれ」


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