「どうやら彼らは上手くやったようだね」

爆発炎上して沈みいくザビー城を離れた崖の上から眺めていた仮面の軍師が満足げに微笑んだ。
邪魔な存在を代わりに始末してくれたバサレンジャーには感謝しなければならない。

「みんな大丈夫でしょうか…」

「心配ないよ。彼らは正義の味方だろう。そう簡単に倒れたりしないさ」

これから豊臣にとって脅威となるかもしれない敵として彼はバサレンジャーを高く評価していた。

「あの…これを…」

「ん? 何だい?」

天音が恥じらいながら差し出したものを受け取り、軍師は小さく首を傾げた。
綺麗にラッピングされたそれは、間違いなくバレンタインチョコレートだ。
しかし、何故。

「幼稚園バスがバスジャックされた時のこともあるし、念のために、ずっとポケットに入れて持ち歩いていたんです」

「それを、僕に?」

「はい。軍師仮面さまに食べて欲しいんです」

頬を染めて見上げてくる天音に軍師がフッと微笑む。

「有難う。喜んで受け取らせて貰うよ」

そう言うと、彼はさっと身を翻して白馬に跨がった。

「ホワイトデーは期待していてくれたまえ」

「はい…!」

瞳を輝かせる天音を愛おしげに見下ろしてから軍師が軽く手綱を引く。
主人に応えた白馬が前足を上げていなないた。

「軍師仮面さま……」

ザビー城で溶けた大量のチョコレートの甘い香りが漂う中。
走り去っていく白馬を、美しい夕陽と燃えるザビー城を背に、天音はいつまでもいつまでも見つめていた。



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