ドアを開けたら銀髪の死神がいた。 明智光秀だ。 「トr」 男が何か言おうとしたのを遮ってぴしゃりとドアを閉める。 「ひどいじゃないですか」 ぼやく声がドア越しに聞こえてきたが、気にせず鍵とチェーンを掛けた。 ──ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、 「ちょ、何やってるんですか!近所迷惑っ!」 「貴女が隣人とトラブルになろうが、私は痛くも痒くもありません。開けてくれたらやめてあげますよ」 仕方なく鍵を外してドアを開けると、薄笑いを浮かべた白い顔がそこにあった。 「トリック・オア・トリート」 「ああ…ハロウィンですか…」 「フフフ…どんな悪戯をして欲しいですか? 逆に貴女が私に悪戯をしても構いませんが」 「お菓子あげるから帰って下さい」 「犯してあげるからだなんてなまえはド変態ですね! どうせなら貴女の下のお口に挿れさせて下さいよ」 手近にあった靴べらをひっ掴んで頭をぴしゃりと叩いたら、明智は「ああッ!」と嬉しそうに喘いだ。 攻撃したこっちのほうが精神的ダメージを受けるってどういうことだ。 「今お菓子的な何かを持って来ますからそこを動かずちょっと待ってて下さい──って、言ってる側から!」 キッチンに向かうなまえの後ろを、ゆらゆらと身体を揺らめかせながら明智がついてくる。 「あ、ほら、お菓子ありましたよお菓子!これあげますから」 とにかく何でもいいからお菓子を与えて退散させようと、最初に目についたクッキー缶を手に取り、それを彼に押し付けた。 「……おいしそう」 ぽつりと呟かれた言葉に、そうでしょうそうでしょうと相づちを打ちかけて気付いた。 明智の目が真っ直ぐこちらを見つめていることに。 「そ、そこから一歩でも動いたら濃姫に通報しますからね!」 「帰蝶なら蘭丸の付き添いで出掛けていますよ。まさかそこへ連絡して子供の楽しみを奪うような残酷な真似はしないでしょう?」 「ひっ…卑怯なっ!」 「いただきます」 蛇の如き獰猛な俊敏さで明智はなまえに襲いかかった。 |