エレベーター内を模した空間の中を、なまえ達を乗せたシートは上がっていく。 一番上まで着くと、切り取られた窓の部分から外が見えた。 美しい夜景が見えたと思ったのも束の間、シートは突然急降下を始めた。 辺りに悲鳴が響き渡る。 なまえは悲鳴こそあげなかったものの、必死に安全バーを掴んでいた。 隣を見れば、余裕の笑顔の明智光秀。 ただし、その長い髪は重力に反して全て上方に持ち上がっていて、広がる銀髪の隙間から片目がぎょろりとなまえを見据え、赤い口がニヤリと笑った。 「ぎゃああああああ!!!」 なまえは落下しながら声を限りに叫んでいた。 「もう!ほんとに怖かったんですからね!」 「おやおや」 「絶対わざとやったでしょう!」 「そんなつもりはなかったのですが」 クックッと笑う夫をちっとも信用出来ない。 絶対わざとだ。 無事地上に戻ったなまえ達は、港町風の園内を歩いていた。 港には大きな客船が停泊しており、海はイルミネーションで彩られている。 なまえ達は、開園15周年記念イベントが行われているネズミーシーに来ているのだった。 「まあまあ、これで許して下さい」 赤ワインを渡される。 ここではアルコールが飲めるのだ。 「女房酔わせてどうする気ですか」 「それはもう、後ほどしっぽりと」 「えっち!変態!」 「ひどいですねぇ。いいじゃないですか、新婚なんですから」 「うう…」 光秀は婆裟羅学園の保健室で保健医として働いている。 正確には養護教諭ではなく校医なのだが、保健医という言葉のほうが馴染みがいいということで、彼自身も保健医を自称しているし、生徒や他の教員達もそう呼んでいるのだそうだ。 その彼の休みに合わせて、なまえ達は少し遅くなった新婚旅行として、ネズミーリゾートに泊まり掛けのプランで遊びに来ているのだった。 「夫婦らしいことをしてあげられませんでしたからね、ここではたっぷり甘えて下さい」 「光秀さんが優しい…」 「どうして怯えた目で見るんです。ゾクゾクするじゃないですか」 「えっち!変態!」 赤ワインは美味しかった。 ちなみに、記念撮影用にふざけてミッチーマウスの耳型カチューシャを光秀に着けたのだが、似合いすぎて逆に怖かった。 カチューシャを着けたまま夫婦の営みを迫られたり、ベッドでぐったりしているところを記念撮影されたりしつつ、翌日もはしゃぎまくった。 それもこれも良い想い出である。 |