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見合いの席。
向かいあって座る男女のお互いの第一印象は非常に良いものであった。
むしろ一目惚れと言っても良い。

少なくとも、付き添いとして同席している秀吉の横で、何故かちゃっかりついてきて「いいね、恋だねえ」などとニヤニヤしている慶次を関節剣で斬り刻みたくなる衝動を抑えられる程度には半兵衛の機嫌は悪くなかった。

「君のことを聞かせてくれないか。何か趣味として嗜んでいるものはあるかい?」

半兵衛の問いかけに、楚々とした風情の黒髪の少女はほんのり頬を赤らめ、花弁のような唇を開いた。

「鞭と緊縛を少々…」

慶次が茶を吹き出した。
半兵衛はそちらを見向きもせず、我が意を得たりとばかりに熱心に頷く。

「鞭か、鞭は良いね。人類が生み出した優れた発明の一つだ。僕も兵の躾に使っているけど、加減次第で軽いお仕置きから本格的な凶器にもなる所が素晴らしいよ」

「では、竹中様もやはり一本鞭をご愛用に?」

「半兵衛と呼んでくれないか。うん、扱いは難しいけれど一番攻撃力があるからね」

「私も好きです。九尾鞭は音は派手ですけれど、痛みは殆どありませんものね」

「全くだ。雰囲気を楽しむには良いのだろうけど、拷問には使えないな。そもそも、」

言いさして、はっとしたように半兵衛は口をつぐんだ。
少し熱くなりすぎてしまった自分を恥じているのか、視線を逸らした彼の白い頬には微かに赤みがさしていた。

「す、すまない…」

「い、いえ……」

沈黙が落ちた。
先ほど茶を吹き出した姿勢のまま固まっていた慶次がようやく我に返り、物問いたげに秀吉を見る。
が、彼の友垣は腕組みして目を閉じ、何やら深く感じいっている様子で何度も頷いていた。


茶を一口飲んで湯飲みを置いた半兵衛が再度口を開いた。

「その…、君は叩くのと叩かれるのではどちらが好みだい?」

「叩くほうが好きです」

「僕もだ」

半兵衛がはにかむように微笑む。
天音も恥ずかしそうに愛らしい笑顔を返した。

「半兵衛さまは踏むのと踏まれるのではどちらがお好きですか?」

「踏むほうだ」

「私もです」

間に机さえ挟んでいなければ、今にも手を取り合っていたに違いない。
キラキラとした眼差しを交わしあう二人に、「半兵衛」と秀吉が声をかけた。

「後は若い者同士、二人で話し合うのが良かろう」

「そうだね。そうさせてもらうよ、秀吉」

「うむ」

互いに見つめあう男女を部屋に残し、秀吉と慶次は外に出た。
室内からは効果的な兵糧攻めの仕方について熱い議論を交わしはじめた声が聞こえてきた。



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