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身体の内側で熱が荒れ狂っている。

吐き気と目眩が止まらない。
鼓動による微妙な振動さえも気持ち悪い。

本当なら早退すべきなのだが、そうして無理を押して帰ったとしても、残念ながら今は自宅には誰もいないのだ。
いつもこの時間自宅にいるはずの母は、今日は同窓会に出掛けていて帰宅は夜になる予定だった。
たまたまそうなってしまったので、これはもうタイミングが悪かったとしか言い様がない。

「ごめん…まだ動けそうにないから先に帰ってて…」

保健室まで付き添ってくれた半兵衛にそう言えば、彼は柳眉を寄せて微妙な表情をした。

「まだ生徒会の仕事が残っている。どうせ暫くは帰れないんだ。待っていてあげるから気を遣わなくていい」

「…私なら大丈夫。少しよくなって来たらお母さんに電話してタクシーで帰るから…」

そこまでが限界だった。
ベッドの中で胎児のように横向きに身体を丸めて、両手で口を覆い目を閉じる。

半兵衛が心配そうな声で何か言ったようだったが聞き取れなかった。

たまにあるのだ、こういう事が。
普段はそれこそ風邪ひとつひかない丈夫な身体なのだが、何年かに一度、溜め込んだものが一気にくる感じと言えばいいだろうか。

大抵精神的なダメージがトリガーになって起こり、今回も原因に思い当たるフシがあった。
色々な事を一度に考え過ぎてしまったせいかもしれない。
言ってみれば知恵熱のようなもので、許容範囲を越えた負荷が発熱という形の不調として現れたのだろう。

放っておけば丸1日ぐらいでけろりと元通りになるのを知っているから、不安はない。
だから半兵衛にも心配しなくていいのだと伝えたのだけど、彼は自分の事のように心配してくれているようだった。

自分の身体を騙し騙し、考えたり、ぼんやりしたりを繰り返していると、丁度良いことに眠気がやってきた。
とろとろと眠りに落ちて行きながら頭に思い浮かんだのは、やはり花のように麗しい容姿を持つ彼のことだった。



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