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結婚してから半兵衛は過保護になったと思う。
以前からそんな兆候があった気もするが、やはりはっきりと自覚したのは結婚してからだ。
それまでは優しいなと思うことはあっても、過保護だなと思うことはなかった。
結婚して彼の中でどんな変化が生じたのだろう。

「半兵衛さん、はい、鞄」

「有難う」

「気をつけて行って下さいね。濡れないように」

「ああ、今日は雨だから君は外出は控えたまえ」

「えー」

「えーじゃない。雨の中わざわざ出掛ける必要もないだろう」

「今日雑誌の発売日なんですよ。だから、近所のコンビニに行こうかなって」

「仕方ないね。帰りに後を尾けられないようにするんだよ」

「なんで私が誰かに狙われてるみたいになってるんですか」

「君は人妻じゃないか」

半兵衛は、それで全て納得がいくと言わんばかりの口調で言った。
もうどうツッコンでいいのかわからない。
どうしてそんな考えになってしまったんだろう。
何か原因があるはずだ。

「どうしてそうなるんですか。誰かに何か言われたんですか」

半兵衛は一瞬口ごもった後、渋々といった風に口を開いた。

「家康くんが」

「家康くんが?」

「『実録!人妻達の浮気レポートVol.108上司の妻の媚肉』というAVを持っていたんだ。彼は人妻好きらしい」

「えええ…あんなに爽やかそうな好青年風なのに人妻マニアなんですか家康くん」

「そんなものを好んで観るような男を、少なくとも性的には一切信用出来ない」

「それは…まあ…」

「いいかい、世の中には特殊な嗜好の人間がいるんだ。人妻に目がないという奴も当然いるだろう」

少なくとも彼の部下に一人はいるのがわかった。

「だからって心配し過ぎですよ」

「用心するにこしたことはないよ。宅配にも気をつけたまえ。家に上がりこんで、いきなり君を、」

「半兵衛さん、そろそろ出掛けないと遅刻しますよ」

「あ、ああ、そうだね。秀吉を待たせるわけにはいかない。行って来るよ、天音」

「はい、行ってらっしゃい」

今度人妻もののAVを家康に借りてみるのもいいかもしれない。
もちろん、半兵衛との仮想プレイで使うために。

天音は笑顔で美貌の夫を見送った。


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