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「好きな色は?」

「白と紫だね」

「好きな食べ物は?」

「野菜炒めかな」

「……は?」

「天音の野菜炒めは最高に美味しいんだ。毎日だって食べられるよ」

「はははっ、いくら旨くても毎日はさすがにきついって半兵衛! て言うかさ、野菜炒めってただ野菜炒めるだけだよな? なんで野菜炒め?」

「残念だよ、君と僕は分かり合えない」

半兵衛が冷ややかな目で慶次を見る。
その隙に佐助はこっそり天音に尋ねた。

「ね、天音ちゃん、なんで野菜炒め? 何か特別な思い入れがあるとか?」

「私が初めて半兵衛に作ってあげた料理が野菜炒めだったの。小学校に上がる前だから随分前の事だけど、お母さんに手伝って貰わずに初めて自分だけで作ったのがそれだったから」

「ああ…なるほどねぇ…」

「半兵衛ってば、作ってる間ずっと心配そうに見てるんだもん」

「当然だろう。包丁で指を切ってしまうんじゃないか、火を使う時に火傷するんじゃないかって心配だったんだよ。怪我をしたら責任を取ろうと決めていたしね。勿論、そんな事がなくてもそうするつもりだけれど」

「半兵衛…」

「はいはい、野菜炒めねー。了解、っと」

キラキラと見つめあう二人に若干引きながら佐助はメモ帳に“野菜炒め”と書き記した。

「佐助君、天音にも質問するのかい?」

「勿論。竹中の旦那の次にする予定だよ。竹中の旦那は言うまでもなく女子にモテモテだけどさ、結構男子に人気あるんだよね天音ちゃん。俺様が知ってるだけでもプライベートを詳しく知りたいっていう熱烈なファンが何人もいるしさ。『あの子可愛いし、イイおっぱいしてるよなー』なんて言ってる奴ら、も、」

「なるほど」

ヤバい、と固まる佐助に薄く笑い、半兵衛は金属製の伸縮式指し棒を自分の手の平にポンと叩きつけた。

「何年何組の誰だい、そいつらは。後で僕が少し躾ておくから詳しく教えてくれたまえ」

「頼むから勘弁してあげてよ、旦那…」



後日発行された校内新聞では、生徒会副会長は意外と独占欲が強い男であるということと、恋人とラブラブであることが強調されて書かれていた。



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