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「だから君は当てはまらない。あんな下らない会話で君が不安に思ったり傷ついたりする必要はないんだ。いいね?」

「う、うん…」

ガサガサと包みを開いた半兵衛は、中からマフラーを取り出した。

「僕のために編んでくれたんだね。有難う。とても嬉しいよ」

ただでさえ綺麗な顔をしているのに、本当に嬉しそうな顔で微笑むものだから、天音は真っ赤になってしまった。
その美貌でその笑顔は反則だ。

天音が固まっている間に彼はマフラーを自分の首に巻いた。

「温かいね」

「わあっ、ま、待って、まだ心の準備が…!」

「マフラーは身に付ける物だよ、天音」

いきなり目の前で使われて動揺する天音に、半兵衛は澄ました顔で言った。

「ところで、君へのプレゼントなんだけど、明日渡しに行こうと思っていたから家に置いてあるんだ。せっかくだから今日渡してしまいたいんだが、これから付き合って貰ってもいいかい?」

「うん、勿論! 有難う半兵衛!」

「礼には及ばないよ。僕だって君から心のこもったプレゼントを貰ったんだから」

半兵衛は優しく微笑んだ。

「少し遅くなっても構わないかな? 夕食は僕がご馳走するよ」

「え、もしかして半兵衛が作るの?」

「嫌かい?」

「全然嫌じゃないよ!むしろ凄く嬉しい!!」


(──ああ、可愛いな)

それにとても美味しそうだ。
頬を染めて喜ぶ天音を見て、半兵衛は瞳を細めた。

天音と手を繋いで自宅へと向かう。
彼女は純粋に喜んでいて、全く警戒していないようだった。
この様子なら逃げられる心配はないだろう。
万が一逃げ出したとしても、さっきそうしたように捕まえてしまえばいい。

両親には事前に旅行をプレゼントしてあったため、今日から三日間家には彼一人だけだ。
そして、いまだかつて彼の策が違えた事はなかった。



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