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関東甲信越地方の梅雨明けが発表された。
今年の梅雨は23日間しかなかったらしい。
長い長い夏の始まりである。

「ドリンク出来ました。取りに来て下さい!」

ドリンクは休憩ごとに少しずつ。
一度に大量に摂取すると胃や心臓に負担がかかって良くないので、数度に分けて適量ずつ摂取するのが理想だ。
柳くんがちゃんと計算して給水タイムを設定してくれているので心配はしていなかった。

レギュラーは問題ない。
しかし、それ以外の部員、特に新入部員は、まだ自分の体調を見極めて自分に合った形で小まめに水分補給するという調整が出来ない者が多く、注意が必要だった。
彼らは決して自己管理を怠っているというわけではないのだが、まだ要領が掴めていないためそうなってしまうのである。
他にも、我慢強い性格や真面目な部員もつい無理をしがちなので、赤也くんのようなタイプとは違った意味で目が離せない。

「どうだい、七海」

「田中くんがそろそろ限界かも」

幸村くんに尋ねられて答える。
田中くんは熱心さではレギュラーに負けていないものの、以前病気をしたために他の部員よりも体力がない。
だから注意して見ているのだが、今日も無理して頑張っているようだった。

「ちょっと俺が話してくるよ」

「うん、お願い」

幸村くんが田中くんのほうに歩いていく。
彼の肩を叩いて何やら話していたかと思うと、田中くんは明らかにほっとしたような表情になった。
あの様子ならもう大丈夫だろう。

幸村くんが戻って来る。

「さすが、幸村くん」

「褒めても何も出ないよ」

悪戯っぽく言って、幸村くんは田中くんのほうへ目を向けた。

「俺も病気で入院していたからね。気持ちはよくわかるんだ。早く皆に追いつかなきゃって焦る気持ちとか、ね」

「幸村くん…」

「でも、焦らず自分の身体に合ったペースで頑張ればいい。そうだろう?」

「うん、そう思う」

「俺もそう考えるまで大分時間がかかったけどね。彼はもう大丈夫だと思うよ」

「偉いね、幸村くん」

幸村くんの頭をよしよしと撫でると、幸村くんは照れくさそうに笑った。

「それに、今は甘やかしてくれる人がいるからね。頑張り甲斐があるよ」


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