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“めちゃくちゃカッコいいウエイターさんがいるから、そこでお祝いしてあげる”

ということで友人に引っ張って来られたのは、二駅先にあるファミレスだった。
学校帰りに高校の仲良しグループで誕生日を祝う場所としてはファミレスはまあ妥当な場所ではある。
しかし、イケメンがいるからと言ってわざわざ二つも先の駅まで……実はお祝いは口実でそっちが目当てなんじゃないのか、などと疑いながらも友人達の後ろをついていき、店員さんに案内されたテーブルにつく。

「ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」

案内してくれた店員さんは、水とメニューをテーブルに置いて戻って行った。
年齢は私達よりも少し上だろうか。すごく感じが良くて笑顔が可愛い女の子だ。
それなのに、他の皆は何故か微妙な空気を漂わせていたのが少し気にかかった。
いつもは愛想がいい子達ばかりなだけに違和感がある。

「どうしたの?今の人、知り合い?」

「知り合いってわけじゃないけど……」

隣に座った友達に声を潜めて尋ねてみたら、言いにくそうに口ごもってしまった。
何か事情がありそうな感じだ。

「今の人、入江さんの元カノなんだって」

別の友人があっさり真相を教えてくれた。
“入江さん”というのは例のイケメンウエイターさんの名前らしい。

「去年の終わりぐらいかな。すぐ別れちゃったみたいだけど」

「その前からあの二人仲いいよねーって噂になってたから、付き合ってたって解った時は皆やっぱそうかって感じだったよね」

「確か音楽関係で趣味が合ったんだっけ?入江さんサックスやってるし」

「えっ……な、なんで皆そんな詳しいの?」

ただの客がファミレスの店員の恋愛事情まで把握しているなんて怖すぎる。
私もよく行く楽器屋さんがあるけど、そこの店員さんの私生活や人間関係まではさすがに知らないし、探ろうとも思わない。

「わりと有名な話だよ。ファンの間では」

「……ファン?」

「だから、入江さんの」

その言葉を聞いた私の脳裏に浮かんだのは、テレビの料理関係の番組でよく姿を見かける某イケメン人気シェフの顔だった。
そのシェフの店には彼目当てのリピーターがついているという噂だから、それと似たようなものなんだろうか。
しかも友人の口ぶりではその入江さんのファンとやらは一人二人ではなさそうだ。

「ちょっと、あんま変な事言うなし。なまえが引いてんじゃん」

「へーきへーき、最初は皆そんなもんだから」

「なまえも一度入江さんを見たら分かるって」

……どうしよう。猛烈に帰りたくなってきた。
残念ながら私は窓際に座らされているため、通路側の友人が邪魔で簡単には逃げられそうにない。



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