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「やっぱりさぁ、かたくなにレモンティーを置かなかったのが悪かったんじゃないかなぁ」

「青春イレブンではレモンティーだけで去年の倍以上の売り上げがあったらしいだーね」

「レモンティーは邪道です!」

バイトの木更津と柳沢はやれやれと肩を竦めた。
今夏に行われた都内コンビニ売上ランキングで、ライバル店の『青春イレブン』に屈辱的な敗北を喫して以来、このルドルフマートの店長である観月はリベンジに燃えているのだった。

「見ていなさい。レモンティーなど置かなくても必ず青春イレブンを下してみせますよ…!」

んふふふふ、と観月が含み笑う。
丁度その時、ドアが開いてセーラー服の少女が一人店内に入って来た。

「こんにちは、観月さん!」

「んふっ。こんにちは。キミはいつも元気ですね。今日も部活ですか?」

「はい!」

元気いっぱいに挨拶をしてドリンクコーナーに向かった少女を見送る観月の眼差しは優しい。

「いい子だな」

「ええ」

赤澤の言葉に観月は素直に頷いた。

「授業も練習も基本5分前行動。待ち合わせには10分前に来て待っている。ちょっとトロいから時間に余裕を持って行動するようにしていると本人は言っていますが、親御さんがしっかりした躾をされているのでしょう。学校の成績もトップクラスだそうですし、テニスへの取り組み方を見てもご両親が教育熱心なのは明らかです。
ファミレスで食事をした時も、箸やナイフとフォークの使い方も綺麗で、今時の学生にしてはマナーもきちんと身についているようでした。
部活がない休日は自主トレかスクールで練習。朝は近所の公園にランニングに行っていたようですが、これはボクが止めました。変質者に襲われる危険がありますからね。ボクが陰から観察していた時にもナンパされていることが度々ありました。まあ、偶然を装ってボクが声をかけて上手く追い払いましたけど」

「…なぁ観月。それ完全にストーカーだぞ、分かってるか?」

「馬鹿なことを言わないで下さい。これは単なるデータ収集、顧客調査ですよ」



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