八月に入り、いよいよ暑さも本格的になってきた。 関東では連日猛暑日が続いていて、冷房の吹き出し口に全裸で五体投地していたいほど暑い。 「やっぱり、暑い時はかき氷だよね」 「そうだな」 今日は蓮二の家にお呼ばれされて、夕食をご馳走になった上にデザートとしてかき氷まで頂いてしまった。 純和風のおうちらしく、出されたのは宇治抹茶白玉金時である。 「なまえちゃんはいつお嫁に来てくれるの?」と、おばさまににこにこしながら尋ねられた時はあたふたしてしまったけど。 子憎たらしいことに蓮二はこんな時でも冷静なままで、 「大学を出たら籍を入れる」 などと涼しい顔で答えていた。本当に憎たらしい。 軒先に吊るされた風鈴の涼やかな音色に耳をすませながらしゃくしゃくとかき氷を食べていたら、何の前触れもなく蓮二にキスをされた。 「甘いな。あずきのせいか」 などとやっぱり涼しい顔でのたまう蓮二にどうしていいかわからなくなった私は、腹いせに彼のかき氷に乗っていた白玉を奪って食べてやった。 もちもちしていて美味しい。 「キス一回で白玉一つとは随分安い代価だな。ほら、これも食べるといい」 ふっと笑った蓮二が自分のかき氷から白玉を三つも私のかき氷に乗せてきた。 えっ、三回も? 三回もの濃厚なキスで腰砕けになった私は、蓮二の浴衣の膝に膝枕をされて、暫く夏の暑さではない熱に苛まれて身悶えることになったのだった。 本当に蓮二には敵わない。 |