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「あ、入江さんいた!」

「呼んで呼んで!皆注文決まったよね?」

「ちょ、うああっ、緊張する!」

ウキウキとかワクワクとか、そんな擬音がぴったりな皆のテンションの高さに、私一人が取り残されている。
ぽつんな感じだ。
今日は誕生日を祝って貰う主役のはずなのにおかしい。

「いい?呼ぶよー」

このテンションのまますみませーんと大声で呼んだりしたらどうしようかと思ったが、その心配はいらなかった。
ちゃんと店内に目を配っていたらしい入江さんが、呼び出しボタンを押す前にこちらに気づいてすぐにやって来てくれたからだ。
さすが人気者だけあって優秀な接客スキルをお持ちのようだ。

「ご注文はお決まりになりましたか?」

テーブルの傍らに立ち、にこやかに尋ねてくる。

「はい、お願いします」

優しそうな人だなというのが第一印象だった。
話し方もそうだけど、雰囲気も柔らかい。
物腰が柔らかい人、というのはこういう人のことを言うのだろう。

明るい色の髪はふわふわした猫っ毛で、見るからに柔らかそうだ。
丸いフレームの眼鏡を掛けていて、レンズ越しにくりっとした大きな瞳が見える。
整った顔立ちは、綺麗とか可愛いといった形容詞が似合いそうだ。
クールなイケメンが好きだという子はともかく、大抵の女の子なら誰もが好印象を持つんじゃないだろうか。
皆がキャッキャするのも無理はないなと思えるほどカッコいい人だ。

なんとなくコミュ力も高そうなイメージがある。
それに女の子の扱いにも慣れていそうだ。
現に、私の友人達からの熱っぽい視線攻撃を華麗に受け流して素早くオーダーをとって去っていったし。
常に店内に目を配っているみたいで、グラスの水が少なくなったら直ぐに来て注いでくれたし。
何事もそつなくこなしそうな人だ。
きっと将来はデキる男になるんだろうなぁ、なんて考えながら食べた料理は美味しかった。


それが私と入江さんの最初の出会いだった。



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