観月は紅茶味のシフォンケーキに、ホイップクリームとミントの葉を添えたものを皿に取っていた。 「んーっ、この香りはアールグレイですね。このホテルのティールームで使っているものと同じ茶葉を使用しているようだ」 「凄いね、はじめちゃん。そんな事までわかるんだ」 「当然です」 言いながら、観月はなまえの周囲へ注意を払うのを怠らなかった。 不二周助。 あの男は危険だ。 カメラが趣味だなんて、きっとなまえを隠し撮りしたり、あわよくばハメ──とにかく、不二周助は危険だ。 裕太を信用していないわけではないが、普段から兄に良いようにあしらわれてしまう彼では力不足だろう。 だから、不二が裕太となまえのデザートブュッフェ行きを嗅ぎ付けた時に迷わず同行を決めたのである。 なまえはボクが守る、という決意のもとに。 そのなまえは嬉しそうにシュークリームを頬張っている。 口に対してシュークリームが大きすぎるので、ほっぺが膨れてハムスターみたいになっている。 可愛いが、ちょっと御行儀の面で指導する必要がある。 「ああ、ほら、一口で食べようとするんじゃありません。クリームがついているじゃないですか」 「ん、」 口の端についたクリームをハンカチで拭いてやっていると、クスクスと笑う声が聞こえてきた。 「本当にお母さんみたいだね、観月は」 「誰がですか!」 |