初めて河村くんが不二くんの事を「不二子ちゃん」と呼んでいるのを聞いた時には思わず笑ってしまった。 “不二”繋がりだからなんだろうけど、あまりにも似合い過ぎて。 セクシーなブラックレザーのライダースーツを着てバイクに跨がる姿まで想像してしまった。 「この場合、やっぱりルパンは手塚くんになるのかな」 「いやいや、そこはタカさんでしょ」 そんな会話をしながらバスに乗り込む。 そこまではわりと元気だった、というか、ハイになっていたのかもしれない。 でも座席に腰を落ち着けてバスに揺られ始めた途端、ドッと疲労感が押し寄せてきた。 眠くて堪らない。 知らなかった。 遠征ってこんなに疲れるものなんだ。 必死に眠気と戦っていると、隣の不二くんがつんつんと私の肩を叩いた。 「眠かったらボクの肩にもたれかかって寝ていいよ」 「え、でも、悪いからいいよ」 「気にしないで。ほら、早く」 「ううん、ほんと大丈夫だから」 「ほら、早く」 「ううん、ほんと大丈夫だから」 「ほら、早く」 「ううん、ほんと大丈夫だから」 「エンドレスか!」 前の席に座っている菊丸くんに突っ込まれた。 「もー、いいから遠慮しないで不二の肩借りて寝ればいいのニャー」 そういう菊丸くんも眠そうだ。 彼の隣の乾くんも「そうするといい。着くまでまだ時間がある」と言ってくる。 「じゃあ……お借りします」 「うん、どうぞ」 そっと肩に頭をもたせかけると、不二くんは何故か機嫌が良さそうに笑った。 頭を撫でられる。 「おやすみ七海ちゃん」 途端に周りの席から、ひそひそ話が。 「中々手強いっスね…七瀬先輩」 「七瀬は鈍いからもっとガンガン攻めないとダメだよん、不二ー」 「いや、もう時間の問題だろう。七瀬は半ば陥落済みと見た」 …全部聞こえてるよ。 |