裕太とデザートブュッフェに行こうと約束した当日、何故か待ち合わせ場所には三人の男達が待っていた。 裕太と、裕太の兄の不二周助と、七海の従兄の観月はじめだ。 「ボクが来ちゃマズかった?」 「そんなことはないけど……不二くん、今日はデザート食べ放題だよ?」 「うん、知ってるよ」 「ボクが来てはいけませんか?」 「そんなことはないけど……はじめちゃん、今日はデザート食べ放題だよ?」 「ええ、知っていますよ」 ダメだこりゃ。 諦めた七海に裕太が申し訳なさそうに謝ってきた。 「すみません、七海さん。何故か兄貴にバレて電話で話してる時に観月さんにも聞かれて…」 「うん、事情は把握した。裕太くんは悪くないよ。せっかくだから皆で行こう」 「七海さん…!」 「ほらほら、早く行こう。甘いものが山ほど私達を待ってるよ」 「はい!」 というわけで、倍に増えた同行者と共にデザートブュッフェにやって来た。 チケットが4人までOKのものだったのも幸いした。 南国風の植物で雰囲気を出したホテルのレストラン内は、当たり前だが女性客ばかりで男性の姿は少ない。 普通なら気まずく感じそうなものだが、裕太の目は数々のデザートに釘付けだった。 もちろん七海も。 「見て見て、裕太くん!このショートケーキ、あまおう使ってるんだって!」 「それめちゃくちゃ甘い高級苺じゃないですか!俺これから行きます!」 「私はどれにしようかなぁ。これだけあると迷っちゃうよね」 「とりあえず目についたものから順番に行くのはどうですか」 「よし、そうしよう!」 七海は一番近くにあった特大シュークリームを皿に取った。 彼女がその場を離れると、不二がさりげなく弟に歩み寄っていく。 「ねえ、裕太。七海ちゃんが冷たいんだけど、どうすればいいと思う?」 「なっ…し、知るかよそんなこと!なんで俺に聞くんだよ!」 「だって七海ちゃん、裕太には優しいじゃない」 「それは俺が観月さんの後輩だからだろ」 「本当にそれだけ?」 「あー!もー!なんだっていうんだよ!別に何もないって!」 「ふうん…」 「あのなぁ、そういうのは観月さんとやってくれよ。俺は七海さんとは本当にそういうんじゃないんだからさ」 「そう。安心したよ。弟がライバルなんて洒落にならないからね」 「目見開くなよ…」 |