1/5 


例えば紅茶なら、砂糖はスプーンに半分か一杯程度で、ミルクティーにする時はミルクは多め。
でも本当は砂糖よりも蜂蜜を入れるほうが好きだ。

ハバネロやジョロキアに挑戦しようとは思わないけど、ピリ辛くらいの辛さなら丁度いい。
夏は特にちょっと辛いものが食べたくなったりするし。

やっぱりほどほどが一番だと思う。

私達の関係も似たようなものだ。

不二家とは親同士が友人で、昔から家族ぐるみで親しくお付き合いをしてきた。
お互いの家に行き来する機会は多いけど、年がら年中いつも一緒にいるわけではない。
ほどほどの距離感での関係が続いている。

不二家の三兄弟の中で一番仲が良いのは誰かと問われれば、由美子お姉さんだと答える。
同い年の周助くんとも仲良しだけど、やはり同性である由美子お姉さんが一番話しやすいから。
由美子お姉さんは憧れのひとだ。
綺麗で優しくて、本当のお姉さんだったら良かったのにと何度思ったか知れない。というか今でも思っている。

裕太くんが兄に感じているものとは少し異なる劣等感を私は彼ら兄弟に感じていた。
裕太くんにとっての兄とは『いつか越えたい壁』で、『ライバルでもある尊敬する兄貴』だ。
でも、私にとっての彼らは、壁どころか生きる世界や次元が違う人達だった。

「不二くんと幼なじみなんていいよね」

昔からやっかみ半分でよく言われてきた言葉だ。
私だけじゃない。
周助くんも耳にタコが出来るぐらい聞かされてきた言葉がある。

「七海ちゃんと仲いいよね」

周助くんの返事はいつも決まっていた。

「七海は大事な幼なじみだよ」

あの笑顔で穏やかに言われれば、女子も男子も皆引き下がる。

ただの大事な幼なじみ。

私は普通なので高望みはしないし、したくない。
何事もほどほどが一番だ。


  戻る 
1/5

- ナノ -