「毎日なまえの作る味噌汁が飲みたい」

大根と油揚げのお味噌汁を飲み終えた悟くんが満足そうなため息をついてしみじみとした口調で言った。
傑くんが「君もか、悟」と言いたげな目で見ている。親友ってそんなところまで似てくるものなのだろうか。

「悟くん、おかわりいる?」

「いる。じゃなくて、俺お前にプロポーズしてんだけど」

悟くんが身を乗り出して綺麗なお顔をずいと近付けてくる。近い、近い。未だにドキドキしちゃうからそれは待って。

「悪いが、先約済みだ」

アスパラと人参の肉巻きを食べ終えてお茶で一息ついた傑くんがぴしゃりと言った。

「まだ返事貰ってねえなら俺のものにしちまってもいいだろ」

「いいわけあるか。ダメに決まっているだろう」

「キッショ。お前ら必死過ぎ」

硝子ちゃんは相変わらず悟くん達に対して容赦がない。

「昨日なんかあった?」

昨日?昨日はクリスマスイブだった。
夜は皆でチキンとピザを食べてプレゼント交換をして盛り上がった。クリスマスケーキも食べた。凄く楽しかったな。

「別におかしなことはなかったよ」

硝子ちゃんも一緒だったから知ってるはずなのに。でも硝子ちゃんは何だか納得いかない様子だった。

「昨日じゃないなら今朝か。朝から何かおかしいんだよね、こいつら」

「べ、別に何もないって」

「硝子の気のせいじゃないか?」

今朝と言えば、二人ともいつも以上にべたべたしたがっていた。それでいて、何かやましいことがあるみたいに私と目が合うと焦っていたような……気のせいだろうか。

「それより、正月休みどうすんの」

悟くんがあからさまに話題を変えた。

「私となまえは帰省する予定だよ」

「そうなの。お母さんから連絡があって」

「そういう悟はどうなんだい?五条家のしきたりや何かで帰らないとうるさいんだろう」

「まあな。次期当主サマとしては一族郎党からの挨拶だなんだと面倒なんだよ」

「硝子ちゃんは?」

「帰省するかはまだ保留。とりあえず彼氏と初詣は行く予定」

彼氏と初詣か。いいなあ。

「なまえも初詣は私と行くだろう?」

「そうだね。傑くんと一緒ならお母さん達も安心するしお願いしようかな」

「決まりだね」

「幼馴染みの特権てやつ?でも、まあ、最後に勝つのは俺だし」

えっ、これって勝ち負けなの?

「そうはいかない。なまえは渡さないよ。誰にもね」

「お前らほんと必死すぎてキッショ」

悟くんも傑くんも硝子ちゃんの辛辣な言葉にも動じた様子はなく、バチバチと火花を散らしている。

「そうだ、なまえ。三が日に迎えに行くから」

「迎え?どこかに出かけるの?」

「そ。俺の家で婚約者としてお披露目会やるからな」

「えっ」

婚約者!?


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