最奥まで挿入っていたものがずるりと抜け出ていく生々しい感触に、思わず身体が震える。 ヌポッといやらしい音を立ててグロテスクなまでに大きいそれが抜かれてしまうと、後にはとろとろと白濁の残滓を溢れさせているうつろな穴だけがぽっかりと口を開けたまま残された。 今まで中を満たしていたものが無くなったことによる喪失感に下腹部がきゅんとなる。 あまりにも深すぎる快感の余韻に、全身が痺れたようになっていて動けずにいると、その間にティッシュで手早く後始末をされてしまった。 そればかりか、少し熱めのお湯で絞ったタオルで身体の隅々まで拭き清められる。 その心地よさにうとうとと微睡んでいたら、小さく笑う声が耳に届いた。 「そんなに私とのセックスはよかった?」 「……傑くん」 意地悪なことを言わないでと目で訴えると、優しく頭を撫でられた。 繊細なその手つきは、呪霊を怖がって泣いていた小さな頃の私を慰めてくれた昔のままで、現在の状況との剥離具合に混乱してしまう。 「君は本当に可愛いね。なまえ。ある日突然わけもわからないまま攫われて、閉じ込められた上にこんな目に遭っているというのに、まだ私への情を捨てきれずにいる」 「傑くんはいまでも大事な幼馴染みだよ」 「私は君をただの幼馴染みだと思ったことは一度もない。初めて逢った時からずっと君だけを愛してきた」 まだ自由に動けない身体を抱き寄せられ、唇や頬に優しくキスを落とされる。 愛おしくてたまらないというように。 愛されているのはわかる。 傑くんは本当に私のことを愛してくれている──それは嫌でも理解せざるを得なかった。 ここに攫われてきてからの彼は今まで以上に優しく接してくれていたから。 元から優しく頼もしい幼馴染みだったけど、自由を奪っている負い目からなのか、いまではまるで壊れ物を扱うように大切にしてくれている。 優しくされればされるほど、嬉しい気持ちと悲しい気持ちが込み上げてきて情緒がぐちゃぐちゃになってしまうのを傑くんは知っているのだろうか。 2007年9月のある日。 任務である村に訪れた傑くんは、呪霊操術で100人以上もの村人を殺めて高専から追われる呪詛師に堕ちた。 それから紆余曲折を経て、いまの傑くんは表向きは盤星教の教祖として信者達からお金を巻き上げ、裏では志を同じくする呪術師仲間を集めているのだという。 普段は教祖様として黒の僧衣と五条袈裟を着ているらしいけれど、ここで過ごす時はラフな服装でいることが多い。 だから、つい錯覚してしまいそうになる。 傑くんは高専にいた頃と何も変わっていないのだと。 私の知っている、非術師を守るべきものとして呪霊と戦っていた頃の彼のままなのではないかと。 「それにしても驚いたな。まさか、悟がまだ手を出していなかったとはね」 私の頭を自分の逞しい胸板に抱き寄せ、私の髪を優しい手つきで梳きながら傑くんが笑う。 「悟くん、は」 「知っているさ。悟も君を愛していた。君もそんな悟に惹かれていたんだろう?」 傑くんの言葉を私は否定出来なかった。 確かに、私は悟くんにも惹かれていたからだ。 でも、それと同じくらい傑くんにも惹かれていた。 最低の女だと罵られても仕方ない。 私は二人の男の子を同時に好きになってしまっていたのだ。 でも、どちらにも気持ちを伝えるつもりはなかった。 無二の親友同士である二人の仲を私の身勝手な想いで引き裂くことなど出来なかった。 それなのに。 「かわいそうに。悟じゃなくて残念だったね。……君の初めてを奪ったのは私だ」 傑くんの長い指が私の膣口をそろりと撫でる。 反射的にびくっとなった私の身体を片腕に抱いたまま、傑くんは私の首筋に唇を寄せ、ぢゅっときつく吸い付いた。そうして何度も繰り返し、日に焼かれることがなくなった白い肌に無数の情痕を残していく。 「君の中はもう私の形になっている。君に男を教えたのも、この身体に男に抱かれる快楽を刻み込んだのも、私だ。そのことを忘れないでくれ」 「傑くん……?」 「この先どうなろうとも、君の身体に刻み付けた私の存在を忘れないで」 どういう意味か問いかけようと開きかけた口に舌を差し入れられて言葉を封じられる。 熱い口腔を味わうように隅々まで執拗にねぶられて、あっという間に息が上がった。 「ふ、ぁっ……!」 「キスだけで濡れてしまったのかい?いやらしい子だ」 「!!傑くんの意地悪っ!」 ぐいぐいと胸板を押して離れようと試みるが、びくともしない。 そもそも体格が違い過ぎるのだ。力で彼に敵うわけがない。 「ふふ、ごめん。少し意地悪だったね。お風呂で洗ってあげるから許してくれないか」 どうやら布団の上で睦み合っている間にお風呂にお湯を溜めていたらしい。 「えっちなことしない?」 「それは約束出来ないな」 傑くんが妖艶な微笑を浮かべて含み笑う。 学生の頃から大人っぽかったけど、実際にこうして大人の男の人になった傑くんは色気が凄まじくてあまりにも性的すぎた。 目の保養を通り越して目に毒だ。 お風呂では、案の定、中に出したものを掻き出してあげるからという名目で傑くんの立派なもので『擦り洗い』をされた上に、また中に出された。 「いつか悟が君を助けに来てくれるよ」 傑くんはいつもこの部屋から出て行く時に必ずそう言うけど、悟くんが本当に助けに来てくれるとして、それまでに傑くんの赤ちゃんが出来てしまうのではないだろうか。 いざその時が来たらどんな顔をして悟くんに会えばいいのか、私はまだわからずにいる。 |