「朝だ。メシ」

「いたた、悟、噛まないで……」

真っ白な毛並みと青い目が綺麗な美猫だが、性格に難ありな悟。

「悟くん、噛んだらダメだよ」

「よしよし、なまえちゃんは今日も可愛いねえ」

優しい性格で見た目も小柄で可愛らしい茶トラのなまえちゃん。

「私のなまえに気安く触らないでくれるかな」

「傑、爪立てたら痛い……」

なまえちゃんには紳士で優しいのに、飼い主である私には微妙に塩対応な黒猫の傑。

彼らは猫なので、当然ながら私にはにゃーにゃーとしか聞こえない。しかし、一緒に生活していく内に何となくだがこう言っているんだろうなというのがわかってきた。

「まーたカリカリかよ。缶詰めにしろよ、貧乏人が」

朝ごはんをあげると、悟はうにゃうにゃ文句を言いながら食べ始めた。
傑にはいつものように少なめにあげた。大きな身体だけど彼は少食なのだ。
傑はいつものようになまえちゃんが食べ始めたのを確認してから自分の餌に口をつけた。

初めは傑となまえちゃんの二匹だけだった。
二匹は別々の一般家庭のおうちからまだ子猫だったのを貰って来たのだが、初対面から仲が良く、まるで人間の幼馴染みのように一緒に育って来た子達だ。
傑はオスなのに面倒見が良くて、甲斐甲斐しくなまえちゃんの毛繕いをしてあげているところをよく見かける。
ご飯の時も先になまえちゃんが食べ始めるまで待っているし、お気に入りの玩具も譲ってあげるし、とても紳士だ。
私には微妙に塩対応だけど。たぶん私のことを餌をくれる猿とでも思っているのだろう。目つきと態度でわかる。
私がなまえちゃんをちゃん付けで呼んでいるのも、傑の無言の圧力を感じてのことだった。

私との関係はともかく、幸いにもなまえちゃんとは凄く相性がいいみたいなので、このままつがいになるだろうと思っていたのだ。
悟が来るまでは。

悟は有名なブリーダーさんのところの血統書付きの猫だったのだが、諸事情によりうちに来ることになった三匹目の猫だ。

最初のうちは傑と喧嘩ばかりしていたが、いつの間にか仲良くなっていた。いまでもたまに喧嘩はするけど、お互いに怪我をさせない程度の加減は覚えたらしい。

なまえちゃんに対しては一目惚れだったみたいだ。まだようやく子猫から大人の猫になりかけたばかりだったなまえちゃんにいきなり乗っかろうとして傑に手酷くやられていた。
最初の内、傑と喧嘩ばかりしていたのはそのためだ。

「まだ化粧終わらねえの?相変わらずトロくせえ女だな」

「いたた、悟、噛まないで……」

「邪魔をしてはダメだよ、悟。早く仕事に行けないだろう」

一見親切そうだけど、さっさと出掛けろということですね。わかります。

身支度を終えた私は、餌皿と水のチェックをして補充してから玄関に向かった。

「じゃあ、行って来るね。仲良く待っててね」

「もう行っちゃうの?行ってらっしゃい。気をつけてね」

なまえちゃんのお見送り嬉しい……。
傑も一緒に来てるけど、これは私が出掛けるのを確認するためなんだろうな。
悟にいたってはキャットタワーの上段に優雅に寝そべって知らん顔をしている。

こうして、私は猫達がいつも通りなのを見届けてから仕事に向かったのだった。

「なまえ、俺と交尾しようぜ」

「なまえ、私と交尾しようか」

「しないしさせない!」

「なんで?傑がいるから?気にすんなよ。見せつけてやろうぜ」

「邪魔をしないでくれるかい、悟。大事なのはムードだ。そうだろう?おいで、なまえ。ベッドに行こう。優しくしてあげる」

「ふえぇ……早く帰ってきてぇ!」


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