釘崎野薔薇には敬愛している同性の先輩が二人いる。
二年の禪院真希と四年の苗字なまえだ。
年が近い真希は言わずもがな、なまえにも相当お世話になっている。

「困ったことがあったら何でも相談してね」

入寮初日にそう言ってくれたなまえとは、主に寮での生活や先輩呪術師としてのアドバイスはもちろんのこと、流行りのメイクの仕方やファッションについて話すことも多かった。
聞き上手で、野薔薇の愚痴にもよく付き合ってくれている。
真希がクールビューティーなら、なまえは可愛い系の美人という形容詞がぴったりな優しい人だった。
そんななまえだが、野薔薇にはどうしても理解出来ないことがある。

「お疲れサマンサー!皆の五条先生が帰って来たよー!」

「お帰りなさい、五条先生」

「五条先生おっつー!でも、出張明日までじゃなかったん?」

「僕有能だから早く終わらせちゃった」

なまえをぎゅうぎゅう抱き締めながら虎杖に答える五条悟。
これである。
野薔薇はこめかみに青筋を浮かばせながら舌打ちした。

実はなまえは幼い頃からの五条の許嫁で、既に結納も交わしている婚約者なのだ。

普通なら相手が在学中は隠すか距離を保つものだろう。普通なら。
しかし、五条悟は「普通」には当てはまらない男だった。
なまえを溺愛していることを隠しもせず、それどころか「なまえは僕のだからね」と誰かれ構わず牽制しまくる始末だ。
仮にも教育者の端くれとしてそれはどうなのかと思わずにはいられない。

「ただいま、なまえ。僕がいなくて寂しかった?」

「寂しかったです。悟さんは?」

なまえさん、呼び方が素に戻ってます。
野薔薇は心の中で突っ込んだ。
悟さんとは、なまえが五条と二人きりの時に呼んでいる呼び方のはずだった。

「僕も寂しかったよ。ずっとなまえのことばかり考えてた」

こんなことを言っているが、五条が移動中や出張先からこまめになまえに連絡を入れていたことを野薔薇は知っている。
なまえが嬉しそうにその都度教えてくれたので。

「嬉しい……悟さん、大好き」

「僕は愛してるから僕の勝ちだね」

「もう、悟さんったら」

二人は人目があるにも関わらずイチャイチャし始めた。
どうやら周りが見えなくなっているらしい。いや、五条の場合はわざとか。

「相変わらずラブラブだなー!」

「あんた、あれ見てよくそんな感想が言えるわね。見なさい、伏黒なんてもはや視界から外してるわよ」

のんきな虎杖の脇腹に肘鉄を入れて黙らせると、野薔薇は自らも目を逸らそうとした──が、遅かった。
五条は小柄ななまえを半ば抱き上げるようにして、その顔にキスを降らせているところだった。
うげっと思わず呻き声を漏らした野薔薇の前で、五条はなまえの唇にちゅっちゅと口付けを繰り返している。

「ふふ、かーわいい」

「ん、んん」

おい、舌入れんな淫行教師。


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