※呪術×アンジェリーク


私は東京都立呪術高等専門学校に通うごく普通の女子高生だ。
ただ、ちょっと呪いが見えて、反転術式が使えるというだけで、特別凄いわけでも何でもないごく普通の女子高生である。
しかしある日突然、この宇宙を司る女王の後継者候補として選出されてしまった。
女王になるための課題は、美しい惑星に浮かぶ大陸エリューションの住民に希望の光を与え、大陸をライバルより発展させること。
同じく女王候補として選ばれた子とともに女王試験として大陸を育成する課題を与えられた私は、女王を支える守護聖と呼ばれる九人の男性の力を借りながら育成に励んでいた。

「で、どうなんだよ、その男達とは」

久々の里帰り。お休みを貰って高専に帰って来た私を出迎えてくれた皆とお話をしていたら、悟くんが急にそんなことを言い出したので私は首を傾げた。

「どうって、色々と助けて貰ってるよ」

「色々と、ねえ……」

「悟くん?」

「気にしなくていいよ。悟は焼きもちを焼いているだけだから」

「ばっ、傑、お前余計なこと言うなよ!」

「ごめんね、悟くん。心配してくれてたんだね。ありがとう」

「お、おう」

僅かに頬を染めた悟くんがそっぽを向く。
照れ隠しだとわかっているから、何だかこちらまでくすぐったいような気持ちになってしまう。
二人してもじもじしていたら傑くんに笑われてしまった。

「変わりがなさそうで安心したよ。困ったことや、つらいことがあったらいつでも言ってくれ」

「ありがとう、傑くん」

相変わらず優しい幼馴染みに、心がほかほかとあたたかくなる。傑くんは本当に優しいなあ。

「余裕ぶってるけど、こいつもなまえがいない間気が気じゃなかったからな」

硝子ちゃんが言った。

「口を開けばなまえのことばかりで、しまいにはなまえを女王候補生に選んだ女王様への恨み言を言い出す始末で、鬱陶しいのなんのって」

「余計なことを言わないでくれるかな、硝子」

傑くんが笑顔で静かに圧をかけるが、硝子ちゃんはどこ吹く風だ。

「それで、いつまでここにいられるんだい?」

傑くんに尋ねられて口ごもる。
明日にはもう戻らなければならないからだ。
そう伝えると、傑くんも悟くんも明らかにがっかりした顔になったので申し訳なくなった。

「まあ、とにかく今日は楽しく過ごそうよ」

「だな」

「そうだね」

硝子ちゃんの言葉に二人が頷く。
愛されている、と思うのは勘違いではないはずだ。
その日は明け方まで皆で楽しく過ごした。

そして、聖地に戻って再び育成に尽力していた私をある日女王補佐官様が訪ねて来られた。

「あなたが女王に選出されるのは、もはや決定事項でしょう。そこで、あなたに大事なお願いがあります」

深刻な話なのかと身構える私に、女王補佐官様は真剣な表情で続けた。

「あなたが女王となった暁には、五条悟を伴侶に選んで頂きたいのです」

「えっ」

女王補佐官様の説明はこうだった。
悟くんはいまや名実ともにこの宇宙最強の存在となりつつある。
私が悟くんを伴侶に選べば、悟くんは不老長寿となる。
女王の伴侶が不老長寿で最強の呪術師となれば、頭の固い元老院のお偉方も認めざるを得ない。
そうなればこの宇宙は安泰だ、と。

「あなたにとっても決して悪い話ではないはずです。よく考えて返事を聞かせて下さいね」

そう言って女王補佐官様は帰って行った。



「顔色が良くないね。向こうで何かあったのかい?」

二度目の里帰りの日。
傑くんが心配そうに私の顔を覗き込んで尋ねてきた。
幼馴染みだからか、傑くんには何でもわかってしまうらしかった。昔から傑くんに隠し事が出来た試しがない。

「実は……」

私は女王補佐官様に言われたことを正直に話した。

「そうか、そんなことがあったのか」

私の話を静かに聞いていた傑くんが呟く。
そういう傑くんは、暫く見ないうちに随分痩せてしまっている。やつれている、と言ったほうが正しいかもしれない。
傑くんの様子が気になったが、それについては聞いてもはぐらかされてしまった。
何があったのだろうと心配で仕方がない。

「それなら、私を選んでくれないか」

「えっ」

「君を愛している。幼い頃からずっと、君だけを愛しているんだ」

驚きに言葉を失ったまま傑くんを見つめる。傑くんが、私のことを?
確かに大切に想われている自覚はあった。
でもそれは大事な幼馴染みだからだと思っていた。まさか、恋愛的な意味で愛されているとは思わなかった。

「初めて君と出逢った時、独りきりだった暗闇に光が差した気がした。いまでもその気持ちは変わらない。君は私にとって、この地獄を照らす唯一の光なんだ」

困惑している私をよそに、傑くんは熱っぽい声音で続けた。

「君が望むならどこかへ攫って逃げてもいい。だから、頼むから、どうか私を選んでくれないか」



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