ノックの音は一度だけ。
それが私達の決めた合図だった。

「入ってもいいかな」

「うん」

こうして男子寮から忍んで来る傑くんを拒んだことは一度もない。
私の部屋は常に彼のために開かれていた。

「モコモコパジャマだ。相変わらず寒いのは苦手なんだね」

含み笑いとともにパジャマの中に差し入れられた大きな手は少しかさついていてあたたかい。
手だけではなく、傑くんの身体はどこもかしこもあたたかいことを知っている。
私よりも体温が高い身体に組み敷かれ、肌と肌が密着するほどしっかりと抱き締められる悦びも。

「ドキドキしてる」

下着越しに胸の膨らみが傑くんの大きな手の平に包み込まれる。
消灯時間を過ぎてから行われるこの密やかな逢瀬に、私の心臓は早くもドクドクと忙しなく鳴り始めていた。

「これは期待されていると受け取ってもいいのかな?」

「傑くんの意地悪」

「ごめんね。君があまりにも可愛いから、ついいじめたくなってしまった。それくらい君のことを愛しているんだ」

そんなことを言われて優しくキスをされてしまえば、許すしかない。私だって傑くんのことが大好きだから。

傑くんの逞しい身体に腕を回すと、再び唇が重ねられた。
優しいばかりだったそれが、徐々に深く甘やかなものへと変わっていく。

「ん……ぅ……」

まだ慣れなくて息が苦しくなる私に合わせて、時々ちゅっと音を立てて唇が離され、さりげなく息継ぎをさせてくれる傑くんは優しい。
だけど、いつも私ばかりが余裕がないみたいで少し悔しくもあった。

甘いキスに酔わされている間に、ブラのホックは外され、モコモコしたパジャマの上と一緒に脱がされてしまっていた。

二人分の体重を受けて、のしかかってくる傑くんごとベッドに深く沈み込む。

「君は私のものだ……私の」

「んっ、ん」

「ふふ、可愛いね」

凍えるような夜の底でありながらも、お互いの体温を分かち合っているお陰で少しも寒さを感じずにいられた。


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