「恵に勉強見てもらってるんだって?」

五条先生の両脚の間に座らされ、後ろから抱え込まれた、いわゆるバックハグ状態で炬燵に入っている。
元々距離感の近い人ではあったけど、恋人同士になってからは更にその傾向が強くなった気がする。やたらとくっつきたがるのだ。
二人きりの時はいいとして、他のみんながいる時でも平気な顔でベタベタしてくるので、ほんの少しだけ困っている。
それでも結局最後には許してしまうのは、私も同じくらい先生のことが大好きで、先生に抱き締められるのが嬉しいからなのだった。

「そういう時はさ、僕のとこに来なよ」

「でも、先生は忙しいから……」

「可愛い恋人に勉強を教えてあげる時間くらいあるよ。それとも、僕じゃ嫌?」

「そんなことないです」

「じゃあ、決まりだね。どこがわからないの?」

「えっと、ここなんですけど……」

私はテーブルの上に教科書とノートを広げると、わからない箇所を指差した。

「ああ、なるほど。これはちょっと難しいかもね。大丈夫、グレートティーチャーの僕がわかりやすく教えてあげる」

「お願いします」

五条先生による英文読解講座が始まった。
わかりやすく教えてあげると言った通り、先生の授業はわかりやすくて、すぐに理解することが出来た。さすが五条先生。

「『So that’s how it’s gonna be!You womanizer!!』これの返しに当たる部分はわかる?」

「『How rude. This is pure love.』ですね」

「そうそう、ちゃんと理解出来てるね。偉い偉い。ご褒美あげちゃう」

先生が取り出したのは、喜久水庵の喜久福のずんだ生クリーム大福だった。もしかしなくても先生の大好物だという仙台名物のお菓子だ。
今朝まで仙台に出張に行っていたから、本当は自分用のお土産として買ったものなのだろう。

「はい、あーんして」

素直に口を開けると、先生が大福を口の中に入れてくれた。甘くて美味しい。大好きな先生の大好きな食べ物というだけで、特別美味しく感じられる。

「どう?美味しいでしょ」

「はい。甘くて美味しいです」

「僕にもあーんして」

私の手元を覗き込んでくる先生の口に大福を運んであげる。二十五万もするというクロムハーツのシャツを汚してしまわないように気をつけながら。
ぱくっとそれを食べた先生がもぐもぐと咀嚼している様子を見ていたら、何だか可愛いと思ってしまった。
二十八歳の成人男性に思うことじゃないかもしれないけど、本当に可愛いのだから仕方がない。

「ふふ、先生可愛い」

「あ、やっぱり?」

だよねー、なんて自分で言ってしまうあたりがとっても五条先生らしい。そんなところも好きだなあとしみじみと思う。

「出張、大変でしたか?」

「いいや?だって、僕最強だし。でもなまえと逢えなかったのは寂しかったよ」

先生が薄く笑みを浮かべながら言った。

「僕、本当は寂しんぼなんだ。だから優しくして」

「いいですよ」

後ろに向き直って五条先生の頭をそっと胸に抱き寄せる。そのまま胸の膨らみに顔を埋めさせた状態でよしよしと頭を撫でてあげた。

「いつも頑張っていて偉いですね。お疲れさまです。いい子、いい子」

「──好き」

「えっ」

「大好きだよ」

「五条先生?」

「愛してる」

私の胸から顔を上げた先生は真剣な表情をしていて、流れるような動きで私をその場に押し倒してキスをした。どうやら何かスイッチを押してしまったようだ。

「五条せんせ……あん」

首筋に噛みつくようにして吸い付かれる。
ぢゅっ、と音がして痕をつけられたのがわかった。

「ごめん。今日は寝かせてあげられない」

ギラギラと不穏に輝く六眼に見据えられて息を呑む。まるで獲物に食らいつこうとしている肉食獣のようだと思った。

いつもより性急な手つきで服をはだけられて、剥き出しにされた私の胸に顔を埋めた先生の首に腕を回す。
五条先生に食べられるのなら本望だった。


  戻る  



- ナノ -