「七海建人です」

「僕は灰原雄、よろしく!」

義兄から一年遅れて東京都立呪術高等専門学校に入学した私は、同期となる灰原くんと七海さんと挨拶を交わしていた。

「夏油なまえです。よろしくお願いします」

「そんなにかしこまらなくていいよ。三人だけの同期なんだからさ、一緒に仲良く頑張ろう!」

「うん、よろしくね」

原作を読んだ時も思ったけど、灰原くんはやっぱり明るくて優しいなあ。七海さんも一見取っつきにくい人に見えるけど本当は優しい人なんだよね。虎杖くんとの関係が好きでした。
原作では死んでしまった二人。出来れば彼らのことも助けたい。でも、私に出来るだろうか。

「夏油さん?」

「あ、ごめん、なあに?」

「苗字だと一年上の夏油さんと一緒でわかりにくいから、下の名前で呼んでもいいかな?」

「うん、いいよ。そうだよね『夏油さん』だとお兄ちゃんと被っちゃうもんね」

「あ、やっぱり夏油さんと兄妹なんだ?」

灰原くん、目がキラキラしてる。どうやら既にお兄ちゃんと会っていたらしい。入学して間もないのにもうこんなにも尊敬の目で見られているって、お兄ちゃん、灰原くんに何をしたんだろう。

「正確には兄妹ではなく親戚にあたるんだけどね」

噂をすればなんとやら。五条さんと硝子さんを引き連れた夏油傑その人が現れた。

「呪術高専へようこそ。待っていたよ、なまえ」

「お兄ちゃん」

人目もはばからずに抱き締められて甘い声で名前を呼ばれた私は赤くなった。本当にそういうところだよ、お兄ちゃん。

「へえ、こいつが傑の妹か」

お兄ちゃんの腕の中にいる私を覗き込んで五条さんが言った。

「写メは散々見せられたけど、本物のほうが可愛いじゃん」

「悟」

「わかってるって。手は出さねえよ」

五条さんは両手を挙げてニヤニヤ笑っている。代わりに硝子さんが「家入硝子。よろしく」と挨拶してくれたので私も頭を下げた。

「夏油なまえです。よろしくお願いします」

「事情はわかってるから、何かあったら相談に乗るよ」

「ありがとうございます」

苦労するね、と笑われてしまったが、私の本当の苦労はこれから始まるのだ。気を引き締めてかからなければならない。

その後はお兄ちゃんが高専を案内してくれるというので、灰原くんと七海さんと一緒に敷地内の施設を見て回った。
原作のあの場所はここにあったのかと、とても参考になった。お陰で灰原くん達とも仲良くなれたし、お兄ちゃんには感謝している。しているけども。

「灰原達と随分打ち解けたみたいだね」

いまはお兄ちゃんの部屋で。
壁を背にしてベッドの上に座ったお兄ちゃんの両脚の間に座らされ、後ろからしっかりと抱え込まれた、いわゆるバックハグ状態でお兄ちゃんと話しているのだが、先ほどからちくちくと針で刺されているような感覚にさらされていた。

「あまりにも仲が良さそうだったから、思わず妬いてしまったよ」

「同期なんだから仲がいいのは良いことでしょ」

「それはもちろんそうなんだけどね。もう私だけのなまえじゃないのかと思うと寂しくて」

私の首筋に顔を埋めているせいで、お兄ちゃんが話すたびに吐息が当たってくすぐったい。吐息だけならまだしも、柔らかいものが押し当てられたかと思うと、ちくっとした痛みが走った。

「お、お兄ちゃん、だめ……!」

「駄目じゃない。なまえは私のものだという印をつけているんだ」

首筋から鎖骨へ。赤い痕を刻んでいくお兄ちゃんの手が私の服の中へと入り込んだ。
お腹をさすられてビクッと跳ねた身体を宥めるように優しくキスをされる。

「ん、ん……」

「くちを開けて」

いやいやと首を振ると、お兄ちゃんの手がブラをずらして直に胸の膨らみを包み込んだ。そのまま指で挟むように乳首をくりくりと弄られる。

「や、あんっ、んんぅ」

思わず甘い声を漏らしてしまった拍子にお兄ちゃんの舌が口の中に侵入してくる。
更なる快感を引き出そうと、胸を揉まれながら口腔を舐め回されて私はお兄ちゃんの腕の中で堪らず身をよじった。

「あ、あっ…んん、ふ、……やぁっ」

「可愛いね……愛してるよ、私のなまえ」

「だめぇっ!ほんとに……ああっ!」

ぎゅっと乳首をつままれてびくびくと身体が跳ね上がる。じわ、とあそこが濡れるのがわかった。キスと胸への刺激だけでイッてしまった。私が特別敏感なわけではないはずだから、お兄ちゃんがテクニシャン過ぎるのだ。

「このまま続きをしてもいいけど、隣で聞き耳を立てている悟を先にどうにかしないとね」

「えっ」

そうだった。隣は五条さんの部屋だった。
コン、と一回だけ壁が鳴り、それから静かになった。

「まあ、私は聞かれてもまったく構わないけど」

「だ、だめ!」

いけない。流されてしまうところだった。
私はお兄ちゃんを闇堕ちから助けなければいけないのに、こんな状態で本当に助けられるのだろうか。何だか物凄く不安になってきた。

星漿体の護衛任務まで、あと二ヶ月。
頑張る。頑張るけど、出来れば誰か助けて欲しい。



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