出張帰りの五条が高専の敷地内にある長い石段を上がって行くと、彼が受け持っている一年生達が箒を手に何やら話しながら石畳の上を掃いていた。
どうやら朝から掃除をさせられていたらしい。

「五条先生!」

いち早く五条の存在に気が付いたなまえが箒を石灯籠に立てかけて、こちらに向かって走ってきた。
両腕を広げれば、何のためらいもなく胸に飛び込んできたのでしっかりと抱きとめてやる。
その髪に顔を埋めるようにして抱き締めてすんすんと匂いを嗅ぐと、成熟した雌とは違う少女特有の甘い香りがした。

「お帰りなさい、先生」

「ただいま。んー、いい匂いだねえ」

「やっ、だめっ、汗かいたから……」

「えー、いい匂いだよ?興奮する」

すかさず飛んで来た釘が無下限に阻まれて五条に当たることなくぽとりと落ちる。

「朝からサカッてんじゃないわよ、淫行教師!」

「野薔薇、ひっどーい!出張帰りで疲れてる担任にこの仕打ち……もっと優しくしてくれても良くない?」

「玉犬、食っていいぞ」

「恵まで!」

わっと泣き真似をすると、なまえがよしよしと頭を撫でて慰めてくれた。もっと別の場所をよしよしして欲しいんだよなあ、などと教師としてあるまじきことを考えながら片腕でなまえを抱き上げる。

「五条先生、お帰り!」

「ただいま悠仁。はい、これお土産ね。後で皆で食べな」

「わ、あんがと先生!」

片手に提げていた紙袋から生徒用のお土産を取り出して手渡してやれば、虎杖が嬉しそうな笑顔をみせた。

「じゃあ、僕は部屋に戻るから、掃除頑張って」

「ちょ、苗字抱えたまま!?」

「当たり前でしょ。なまえにはこれから僕を癒して貰う大事な役目があるんだから。担任教師権限でなまえは連れて行きまーす」

またもや釘と玉犬が襲いかかって来たが、どちらも五条の術式に阻まれて彼には届かなかった。

「ちょっと!無下限解くかなまえ置いて行きなさいよ!」

「あはは、どっちも無理だね」

地団駄を踏んで悔しがる釘崎と冷静に軽蔑の眼差しを向けてくる伏黒。それに、しょうがないなあといった顔で見送る虎杖を残して五条はその場から歩き去って行った。


五条の部屋は職員用の寮の端、新たに作らせた分棟の中にあった。
こことは別に所有しているマンションもあるのだが、どうせ寝に帰るだけなのだからと近頃は高専の部屋に寝泊まりしている。
その彼の部屋に併設された浴室でなまえと一緒にシャワーを浴びた五条は、バスタオルでくるんだ彼女を抱えてベッドに向かった。

「ごめんね。疲れちゃった?」

ベッドに座らせたなまえは頬を上気させて肩で息をしていた。
それもそのはず。この担任教師によって浴室の中であんなことやそんなことをされていたからだ。

「出張帰りで疲れてるって言ってたのに」

「なまえを見たら元気になっちゃった。まだまだ僕も若い証拠だね」

てへぺろと可愛い子ぶってみせているが、五条はアラサーである。しかし、全くそうは見えない。彼自身も自分の容姿の良さを自覚しているので手に負えない。
極限まで鍛え抜かれた肉体は最強の名を冠するのに相応しく、まさしく色々な意味で規格外な男だった。

「先生のばか、絶倫」

「いやあ、照れちゃうなあ」

わかってないな、と五条は思う。そんな風に上目遣いで睨まれても可愛いだけだ。余計に男を煽るだけだということを、この子はまだわかっていない。

「可愛い。好き。愛してる」

五条は可愛くて仕方がないといった風になまえの顔中にキスの雨を降らせた。

「今日はもうしないから、僕と一緒に寝てくれる?」

こくんと頷いたなまえを抱き込んでベッドに入る。
五条は抱き枕にするようになまえのほっそりした脚に脚を絡め、まだ幼さを残す柔らかな頬にすりすりと頬擦りした。
頬に当たる感触はすべすべとしていて柔らかく、ほのかに優しい香りがした。

「はあ……幸せ」

ショートスリーパーの五条は極短時間の睡眠で常人以上の活動が出来る。睡眠はあくまでも肉体を一時的に回復させるための手段に過ぎない。
しかし、この少女といる時は別だった。
深い眠りにつき、心身ともに安らぐことが出来る癒しのひとときなのだった。

──悪いね、悠仁、恵、野薔薇。しばらくの間なまえは僕が独り占めさせて貰うよ

そっと微笑んでなまえにキスをする。
彼女の甘い唇を味わうように、何度も優しくついばんでから、ちゅっと吸った。

「んん、ごじょうせんせ」

「大丈夫。ゆっくりおやすみ」

いつの間にか降り始めた雨が窓の外の景色を薄暗いものに変えていく。微かに聞こえる雨音が優しく眠りへと誘う。

愛しい少女を腕の中に抱き込んだまま、五条は穏やかな眠りへと落ちていった。


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