八月も終わりに近付いたある日の午後。
久しぶりにお休みを貰えたので旬の桃を使って桃のアールグレイマリネを作ってみたのだが、かなりいい感じに出来上がった。

「美味しそうだね」

お皿を前にして嬉しそうに言ったのは、虎杖くんに稽古をつけてきた帰りに私の部屋を訪ねてきた五条先生。
稽古の帰りだから黒いシャツにズボンというラフな格好で、いつものアイマスクではなくサングラスをかけている。

「もう食べてもいい?」

「はい、どうぞ召し上がれ」

「いただきまーす」

桃のアールグレイマリネを頬張った五条先生が目を輝かせる。

「うっまい!なにこれめちゃくちゃ美味しい!」

「お口に合って良かったです」

「合いまくりだよ。お店で出せそうなくらい美味しい」

古今東西のスイーツを食べてきた五条先生のお墨付きが貰えて嬉しい。

「虎杖くんの様子はどうですか?」

「悠仁ね。確実に前より強くなってるよ。期待していた以上だね」

フォークを置いた五条先生が立ち上がる。おもむろにサングラスを外し、テーブルの上に置いてこちらに回り込んできた。すぐ目の前に立った五条先生があの美しい青い瞳で見つめてくる。まだ何かされたわけでもないのに、それだけで私はドキドキしてしまっていた。というか、圧が凄い。

「そんなに悠仁が気になる?僕と二人でいるのに?」

「だって」

「そんな口は塞いじゃおうか」

逃げる間もなかった。獰猛な肉食獣が獲物を捕まえるように素早く私を抱き締めた五条先生ががっつりと口と口を合わせて口内を蹂躙していく。

「ん、んっ、せんせぇ……」

「ちゃんと僕だけを見て。余所見は許さないよ」

婚約者としての正式な御披露目が済んで以来、五条先生は私に対する独占欲を隠そうとしなくなった。伏黒くんにまでマウントを取りたがるので、伏黒くんや野薔薇ちゃんに呆れられている。
唯一、虎杖くんだけは「めっちゃ愛されてんな、苗字!」と好意的に受けとめてくれていた。

「可愛い可愛い僕のなまえ」

五条先生はゆったりした責めで私の口腔をまんべんなく舐め回し、官能的なその舌技で私を昂ぶらせていく。口の中全体がじんじんと火照り、痺れてくるような感覚にうっとりと目を閉じる。
一旦唇が離れると、唇に切なさを覚え、私は潤んだ瞳で五条先生を見上げた。

「僕のキス好き?いいよ、もっとしてあげる」

そんな私を満足そうに見下ろして、五条先生は今度は何度も優しく唇を食むようにしてキスしてくる。そのたびに甘い痺れが唇から広がり、私は思わず身体を震わせた。
まだ明るいのに、とか、野薔薇ちゃんが戻って来たらバレちゃうとか、五条先生を拒まなければならない理由が幾つも頭をよぎったが、そんなことさえもどうでもよくなってしまいそうな快楽に、私は自らを保っているのがやっとだった。

「まだ余計なことを考えてるね。ダメだよ集中して」

頬を五条先生の両手の平に捉えられたかと思うと、ひときわ深く唇が重なる。先ほど食べた桃のせいで甘い味のする舌が口腔に侵入してきて、思うがままに激しく蹂躙し始める。既に暴き立てられている口腔の弱点を舌先が的確に刺激してくるため、熱い痺れが波のように押し寄せてきて、逃げ場のない私の意識はあっという間に真っ白に染まってしまった。

「っはぁ、は、ぁ、せん、せ……」

「キスだけで軽くイッちゃったね。なまえはえっちな子だなあ」

五条先生は余韻を与えるように軽く舌を絡めてから、ゆっくり唇を離した。名残惜しそうに舌が出ていく。
五条先生にあれこれ教え込まれた身体だとはいえ、純粋にキスだけで達したのはこれが初めてだった。霞んだ思考のまま、呆然としている私を見下ろして、五条先生は得意げに笑っている。

「今度はこっちも可愛がってあげる」

五条先生は私のシャツを捲り上げると胸を顕にした。ぷるんと揺れて零れ出た張りのある豊かな双丘の先端はキスの刺激だけで既にピンク色の突起がぷっくりと自己主張していた。
先生の手が胸元に触れ、柔らかさを楽しむようにゆったりと揉みしだき始める。私はほぼ無意識のうちに先生の手を迎え入れてしまっていた。

「ん、ちゅ、んん……っん、んぅ……っ」

キスをしながらただ緩やかに揉まれているだけなのに、どうしようもないほどの快感が胸元から全身に広がっていく。リズムも力加減も、すべてが女の身体を知り尽くしたものだった。胸元がじんわりと火照って切なさに襲われ、乳首は更にぷっくりと硬さを増していく。先生の指がその先端をぴんと弾くと、私は重なり合ったままの唇の隙間から甘ったるい嬌声を漏らしてしまった。

そのまま五条先生は指先で私の乳首を弄び始めた。ぷにぷにと軽くつまんでは、指の腹で円を描くように捏ね回す。焦らすように乳輪をなぞっては、そっと優しく先端を弾く。開発途上にある乳首をいたわりながらも、指技で昂ぶらせていく。そうして五条先生に弄ばれるたびに切なく甘い痺れが生まれ、乳首が融けてしまいそうな感覚に襲われる。

「イキそう?いいよイッて」

そう言って五条先生は再び私にキスをすると、胸を手の平で包み込みながら乳首を指と指で挟んで引っ張った。
唇と胸元から流れ込んでくる痺れが上半身に広がり、私をびくびくと悶えさせる。
あっという間に私は上り詰め、白く染まった意識の中で何かが弾けた感じがした。

「ん、んぅぅーー!ん……っ」

五条先生の腕の中で身体がびくびくと跳ねる。いとも簡単にイかされた身体から、ふっと力が抜けていった。そのまま床にへたり込みそうになった私の身体を五条先生が支えてくれる。

「おっと。ふふ、そんなによかった?相変わらず敏感な身体だね。教え甲斐があるよ」

ゆったりしたキスをされ、ふわふわした絶頂の余韻のなか、私はうっとりと自ら唇を先生に捧げていた。

「僕のももうこんなになっちゃった。続きはベッドで、ね」

唇を離した五条先生が耳元で甘く囁く。
私は布越しでもはっきりとわかるくらいバキバキに勃起した逞しい先生のものを手で優しく撫でさすりながら、期待に下腹をきゅんと疼かせつつ、こくんと小さく頷いた。



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