──大変なことになってしまった。

私の部屋のドアの向こうで、最強二人が言い争っている。
偶然にも同じタイミングで出張から帰ってきた五条先生と夏油先生が鉢合わせてしまったのだ。

「だから、なまえは僕のものだって言ってるだろ。お前は間男なんだよ、傑」

「聞き捨てならないな。なまえは私と結婚を前提としたお付き合いをすることになっているんだよ。間男は君のほうじゃないのか、悟」

修羅場だ。
思い切り修羅場だ。

今にも親友同士の喧嘩という名の怪獣大決戦が始まりそうだったので、私は意を決してドアを開けた。でないと建物が崩壊しかねなかったので。

「五条先生、夏油先生、おかえりなさい」

私の姿を目にした二人は、ぱっと顔を輝かせて笑顔になった。

「ただいま、僕のなまえ」

「ただいま、私のなまえ」

口々にそう言ってから、お互いを睨み付ける。

「誰が誰のだって?」

「どうやら性格だけじゃなく耳まで悪くなったらしいね」

「け、喧嘩はやめて下さい!」

二人が同時に私を見る。どちらも私が自分の告白を受け入れてくれるはずだと確信しているようだった。

「ごめんなさい」

私は正直に謝ることにした。

「どちらかなんて選べなくて……だから」

「ああ、そういう意味か。てっきり僕を振ろうとしているのかと勘違いしちゃったよ」

五条先生がにっこり笑う。ほっとしたのも束の間、

「じゃあ、傑がいなくなれば何も問題はないね。術式反転──」

「“赫”だめ!だめです!」

慌てて五条先生の腰に抱きついて術式の発動を止める。
この人、いまたった一人の親友に“赫”を撃とうとした!

「大丈夫だよ、なまえ。何も心配はいらない」

夏油先生が優しく言った。さすが夏油先生。こんな状況でも冷静だ。

「今すぐこの馬鹿を始末するから少し待っていてくれ」

「呪霊出しちゃだめ!だめです!」

ちっとも冷静じゃなかった。この人めちゃくちゃブチ切れてる。

「じゃあ、どうすんの?僕は引く気ないけど」

「私も引き下がるつもりはないよ」

二人の間にバチバチと火花が散って見える。怖い。

「あの……二人とも、じゃだめですか?」

「それって、僕達二人と付き合うってこと?」

「やっぱりだめですよね……」

「いいよ」

意外にもあっさり受け入れたのは五条先生だった。

「他の男なら殺してるけど、傑だからね」

「私も悟なら構わないよ」

夏油先生が言った。

「その代わり、それなりに覚悟してもらわないとね」

「私達と同時に付き合うということがどういうことなのか、しっかり理解してもらわないとね」

疑問符を頭に浮かべていると、五条先生にひょいと抱き上げられた。

「とりあえず、僕の部屋に行こうか」

「そうだね。悟の部屋のベッドは無駄にデカいから丁度いい」

「ベ……ベッド?」


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