「ありがとう……私を選んでくれて。本当に嬉しいよ」 感極まったように傑くんは私を抱き締めた。ちょっと苦しいけど私も嬉しい。 「まだ信じられない。君が悟よりも私を選んでくれたなんて」 「私にはずっと傑くんだけだよ」 「私もずっと君だけだよ」 ほんの僅かに身体を離した傑くんが私の頬に手を添えて顔を上向かせる。 端正な顔が近付いてきて、ちゅ、と触れあわせるだけの優しいキスをされた。 「初めて逢った時からずっと君だけを愛してきた。これから先もずっと君だけを愛している……他の誰も目に入らないくらいに、君だけを」 それからは少し慌ただしかった。 私は聖地に戻って女王に即位し、それから少ししてから傑くんも私の伴侶として聖地に迎えられた。 女王としてのお仕事は大変だけど、傑くんや新たな女王補佐官となったあの子が補佐してくれるので、何とかやっていけている。 呪いのない聖地で暮らすようになってから、傑くんはまた自然に笑えるようになっていた。毎日生き生きと過ごしている。 今でもたまに非術師のことを猿呼ばわりすることがあるけど、その数は確実に減ってきていた。 そして、それ以上に変化したのは。 「愛しているよ、なまえ」 愛を囁いた傑くんが何度も角度を変えて口付けてくる。 下唇を柔く食まれ、舌を差し入れられて口の中を愛撫される。 「ん、んん……すぐる、く、…」 「ふふ、可愛い」 前にも増して甘々になった傑くんは、私に対する気持ちを隠さなくなっていた。 それはもう恥ずかしくなるくらいに、所構わず抱き締めたり、キスをしたり、愛してるよと言ってくるので、さすがに少し困っている。 傑くんの溺愛ぶりが聖地に住む人々の間で広まってしまっているせいで、どこにいても「お幸せそうですね」と声をかけられてしまう始末だ。 「ねえ、傑くん」 「うん?」 今日の分のお仕事を終えて、私室で二人きりになると、傑くんは私を膝の上に抱っこして頬を擦り寄せてきた。 「本当に良かったの?私についてきて」 もう簡単には家族や悟くん達には会えないのだ。 傑くんには他の人生だって選べたはずなのに、私は彼からその選択肢を奪ってしまった。後悔がないと言えば嘘になる。 「どうして?これ以上ないほど幸せなのに?」 傑くんが私の頬にキスを落とす。 ハーフアップにされた長い黒髪が肌を掠めて、くすぐったさに身を竦めた私に、傑くんは小さく笑ってみせた。 「あのまま地上にいたら、私は猿……非術師を手にかけて、呪詛師として追われる身になっていたかもしれない」 「傑くんが?そんなこと……」 「あの頃の私はそれくらい追い詰められていたんだ。そんな私を救ってくれたのに、感謝こそすれ、後悔なんてするはずがないだろう?」 何より、と傑くんは微笑んだ。 「例えそれがどんなところであっても、君がいる場所こそが私にとっての楽園さ」 |