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自宅では到底使わない高級ブランドの石鹸で身体を洗い終えると、泡を素早くかつ丁寧にシャワーで洗い流した。
さすが高級品。上品な良い香りがする。
髪は迷ったのだが、せっかくアメニティのセットでシャンプーとトリートメントが付いていたので、結局洗うことにした。

ふかふかのタオルで水分を拭いたら、急いでバスローブを身に付けてバスルームを出る。

「すみません、お待たせしました」

「大丈夫ですよ。もっとゆっくりしてきても良かったのに」

「いえ、あの、じゃあどうぞ」

「ありがとうございます。では、入って来ますね」

入れ替わりに赤屍がバスルームに入ったのを確認して、ほっと息をつく。

ここは都心にある、つい最近リニューアルされたばかりのセレブ御用達のホテル。
10万もするクリスマス限定宿泊プランに赤屍が申し込んでくれたのだ。

今まで食べた中で一番美味しく感じた、クリスマスディナー。
お約束のように花束とリングをプレゼントしてくれた赤屍に連れられて、この部屋へとやって来た。

抱き寄せられてキスの後で、

「先にシャワーを浴びますか?」

と優しく尋ねられて、聖羅はこくこくと頷いた。
身体を綺麗にしたかったのはもちろんだが、少し落ち着く時間が欲しかったのだ。

赤屍がシャワーを使っている間にと、ドライヤーで髪を乾かしながら考える。
果たして、この自分にこれだけの投資をして貰えるほどの価値があるだろうか。
彼が自分に注いでくれる愛情に報いることが出来るだろうか。

赤屍は優しい。
それこそ、彼を知る者達が「信じられない」と揃って怯えるほどに、聖羅にはびっくりするくらい優しい。

狂気的な溺愛の仕方だと言ったのは誰だったか。
確かに、時々怖くなるほどに深く愛されている。
だからこそ不安になるのだ。

本当に自分でいいのか、と。

他に相応しい相手がいるのではないだろうか、と。

「聖羅さん」

「!」

いつの間にかバスルームから出てきていた赤屍が聖羅の手を取る。

「何か、おかしなことを考えていましたね」

「えっ、あ…」

「私には貴女だけだ。私が愛しているのは貴女だけですよ、聖羅さん」

「赤屍さん…」

「だから、自分に自信を持って下さい。貴女には愛される価値がある」

思わず瞳を潤ませると、優しく抱きしめられた。

自分と同じ石鹸の良い香りがする。

「今日は私が貴女のサンタクロースになりますから、何でも願い事を言って下さい」

「何でも…ですか?」

「ええ、叶えて差し上げますよ」

「じゃあ…」

聖羅が心から願った願い事は、ブラッディなサンタクロースによってしっかりと叶えられた。

この上なく優しく、満ち溢れるほどの深い愛情を持って。

満足しきって眠る聖羅を見下ろし、赤屍はその唇に口づけた。

「メリークリスマス、聖羅さん」


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