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木曜日というと、いつもなら「ああ…まだあと一日あるのか」と憂鬱になるところだが、今日は違う。
明日頑張りさえすれば、いよいよゴールデンウィークに突入するからだ。
待ちに待った連休である。

同僚の中には、明日と1日2日に有休をとって10連休にしている人もいる。
実に羨ましい限りだ。

「聖羅は連休どうするの?」

「温泉に行くよー」

「温泉もいいね。疲れがとれそう」

「そういう友子はイタリア行くんでしょ。いいな、海外」

「こんな時でもないと行けないからねぇ」

ランチを食べながらお互いの予定を教え合う。
同僚の友子はイタリア旅行に行くらしい。

「あ、ちょっとごめん」

スマホを取り出して確認すると、プロジェクトリーダーからグループLINEが来ていた。
15時からミーティングを行うということだった。

ついでにメールも確認すると、一通来ていた。

「…赤屍さん?」

赤屍さんというのは、私の命の恩人であり、何故か気に入られてしまってストーカーと化している運び屋さんである。
その赤屍さんが何の用だろうとメールを開くと…。


from:赤屍蔵人
───────
こんにちは。
いよいよ明後日からゴールデンウィークですね。
連休のご予定はもうお決まりでしょうか。

温泉…なんて良いですねぇ。

──────

「ひぇっ…!」

「えっ、何?」

「どうしたの?」

「ななななんでもない!」

口に出したら取り返しのつかないことになりそうで、ぶんぶん首を振って何も見なかったことにした。

だ、大丈夫だ。

連休に温泉なんて誰でも考えることだし。

別に予定を知られているわけではないはずだ。
───たぶん。

そうは思うものの、なかなか寒気はおさまらなかった。

ゾクゾクしながら赤屍さんからの不吉なメールを削除する。

せっかくの連休に何も起こらなければいいのだが。


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