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「大きなお天気の崩れもなく、穏やかな夜になるでしょう」

ニュース番組の天気予報コーナーで気象予報士のお姉さんが言っていた通り、穏やかな夜だった。
月は見えたり見えなかったり。
それもまた風情があっていい。

こんな心持ちでいられるのも、今日が金曜日だからだ。
いや、日付が変わってしまったからもう土曜日か。
やっと迎えた週末のお陰で、今夜の空のように穏やかな心でいられる。

残業を終えてようやく帰宅し、ソファにぐったり凭れていると、赤屍さんが冷たい麦茶を持って来て頭を撫でてくれた。

「ありがとうございます」

遠慮なくぐびぐびと飲み干し、ふうと息をついてまたソファに凭れかかる。

真上に赤屍さんの顔。

キスをされるのかなと目を閉じたら、目蓋をクレンジングジェルを付けたコットンで優しく拭かれた。
ポイントメイクの落とし方を知っているのは、私がやっているところを見ていたからだろうか。
マスカラもアイシャドウも丁寧に拭き取られて、同じように口紅も落とされる。

「そのままじっとしていて下さい」

目を閉じていて見えないけど、音で赤屍さんが自分の手の平にクレンジングジェルを伸ばしているのがわかった。
それをフェイシャルマッサージをするみたいに顔に塗られて、ファンデーションを落とされていく。

くるくると円を描くように動く指先は、まるで羽毛が滑るように優しく、丁寧に。

自分でやる時は何とも思わないのに、ひとにやってもらうと気持ち良いのは何故だろう。

ホットタオルで汚れとジェルを拭き取られて、一気に顔がさっぱりした。
ついでに化粧水と乳液までつけてくれる赤屍さんは、最高の恋人だと思う。

ここまでの流れですっかりリラックスしてしまっていた私の身体を赤屍さんが抱き上げる。

「さあ、お風呂に入りましょうね」

優しいけれど、底に欲が見え隠れしているのが今夜の月のようだと思った。

きっと、洗った後に食べられてしまうのだろうけど、それでも構わない。
むしろ今の私はそれを望んでいた。

どうせ明日はお休みだし。
私も久しぶりだから赤屍さんが欲しいし。

がっつかれてもいいかなと思ってしまう私は相当調教されている。
思わず笑いが漏れた。

「聖羅さん?」

「赤屍さん、愛しています」

そう告げると、今度こそ唇にキスをされた。

「私もですよ。今週も一週間、お仕事お疲れさまでした。たっぷり甘えてゆっくり休んで下さいね」


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