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赤屍さんに七夕祭りに誘われた。

そうと知っていたら浴衣を用意しておいたのにと焦っていたら、赤屍さんが浴衣を持って来て着付けまでしてくれた。

「よく似合っていますよ。綺麗だ」

「ありがとうございます。赤屍さんも素敵です」

いつものスーツもいいけど、浴衣姿の赤屍さんも素敵だ。
いい男は何を着ても様になるなあ。

そうして二人して浴衣を着て七夕祭りの会場に向かった。

「短冊に願い事を書くんですよね」

「ええ。ほら、あそこで書くみたいですよ」

会場の入口にはテントがあり、長机が並べられていて、そこで短冊に記入するようになっていた。
願い事を書いた短冊は係の人が笹に吊るしてくれるそうだ。

「願い事、何にしましょうか」

「赤屍さんはお願いしたいこと無いんですか?」

「特にありませんねぇ。願いはそもそも自分で叶えるものだと思っていますから」

「赤屍さんらしいですね」

「では、私は、貴女の願い事が叶うようにと書きましょう」

「赤屍さん…」

「出来れば、貴女の願いは私が叶えて差し上げたいですけれど、ね」

「ありがとうございます。嬉しいです」

イチャイチャしていたら、係の人に咳払いをされてしまったので、急いで短冊に願い事を書いた。

「それではこちらはお預かりします」

「お願いします」

短冊を預けると、別の係の人がたくさんの短冊が入った箱を運んでいくのが見えたので、ついていくことにした。

「わあ、すごい!」

「これは立派ですね」

会場の中央には、竹のような大きな笹が立てられていた。
そこに係の人が短冊を吊るしていく。

『宝くじが当たりますように』

『両想いになれますように』

『結婚出来ますように』

『転職がうまくいきますように』

様々な願い事が書かれた短冊を見て、自分の願い事も他人から見るとこんな感じなのだろうかと少し恥ずかしくなった。
でも、もう書いてしまったものは仕方がない。

「聖羅さん、向こうで七夕限定スイーツが食べられるそうですよ」

「あっ、食べたいです!」

「では、行きましょうか」

限定ものだけあって少し並んだが、無事スイーツをゲット出来た。
何でも、天の川を模したゼリーらしい。
青いゼリーの中にミルキーホワイトのババロアが乗っている上に、キラキラした星型のお菓子が添えられていた。

「なんだか食べるのがもったいないですね」

「写真を撮りましょうか?」

「それなら赤屍さんも一緒に」

スイーツがちゃんと写るように前面に持ち、赤屍さんとくっついてスマホで自撮りする。
後でSNSにアップしておこう。

「織姫は彦星に会えたでしょうか」

空は生憎の曇り空。
夜には少し晴れるとなっていたから大丈夫だとは思うけど。

「会えますよ、きっとね」

赤屍さんがそう言ってくれたので安心出来た。

「それにしても、一年に一度しか会えないというのは不便なものですね」

「赤屍さんならどうしますか?」

「私なら、何としても会いに行きますよ。貴女のためならば、天の川も越えてみせましょう」

「赤屍さんなら本当に出来そうだから凄いです」

この人を好きになって良かった。
心からそう思う。

手と手を繋いで歩いて行く途中、あの短冊が吊るされた笹の前をもう一度通った。

私の短冊はもう吊るされたかな。

『赤屍さんとずっと一緒にいられますように』

私の願い事は、隣にいる頼もしい恋人が叶えてくれそうなので、心配はいらないかもしれない。

そうですよね、赤屍さん。


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