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「はぁ…疲れた」

湯船に浸かりながら思わず独り言が漏れるくらいに疲れていた。
金曜日には一週間の疲労がどっと来る。
それを癒すためにいつもは早めに就寝するのだが、今日はそうもいかない。
何故なら、今日は赤屍さんのマンションに泊まりに来ているからだ。

自宅のユニットバスと違い、大きな浴槽には全身を横たえて浸かることが出来る。
時間を気にせずゆっくり浸かって来なさいと言われているため、この心地よさを堪能しているところだった。

既に髪も身体もぴかぴかに洗い上げていて、あとは上がるだけなのだが、気持ち良くていつまでもこうしていたいと思ってしまう。

でも、さすがにそろそろ出なければ。

名残惜しく思いながら湯から出て、バスタオルで身体を拭く。
今からこの肌に赤屍さんの手が触れるのだと思うと、ちょっとドキドキしてきた。

それはもちろん期待していないと言えば嘘になるけれど、やっぱりそうと意識すると緊張してしまう。

「聖羅さん、もう上がりましたか?」

「あ、はい。お風呂ありがとうございました」

脱衣所の外からかけられた声に返事をして、急いで下着を履き、バスローブを身につけた。
そっとドアを開ければ、やはりまだ赤屍さんはそこにいて、淡く微笑みながら私へと手を伸ばしてくる。

「寝室に行ってから髪を乾かしましょう」

私にドライヤーを持たせると、赤屍さんは私を軽々と抱き上げた。
そのまま寝室に歩いて行き、キングサイズのベッドに私を下ろす。

「乾かしますから、そのままで」

赤屍さんがドライヤーを手にして言った。
ドライヤーから吹き付けてくる温風は丁度良く、大きな手で髪をかき上げながら手早く乾かしていく。

それだけでも気持ち良くて眠くなってしまったのに、赤屍さんはドライヤーをしまうと私にベッドにうつ伏せになるように言った。

「マッサージしていきますね」

まずはつま先から。
指を一本ずつ擦り、それから足の裏へ。
溜まりに溜まった毒素を、握った拳でごりごりと擦ってリンパ腺に流していく。
ちょっと痛いけれど、すっと何かが流れる感覚があったあとは、ただひたすら気持ちが良い。
足首をキュッキュッと捻って、赤屍さんの手がふくらはぎにのぼっていく。
リズミカルに優しく揉まれると、次第にむくみが取れていくのがわかる。
むくんでしまっていると自覚があるので、そこは特に気持ち良く感じた。

脚の付け根にあるリンパに悪いものを流してから、赤屍さんの手が腰を押してくれる。
無意識の内に固くなってしまっていた筋肉が優しくほぐされていく。

赤屍さんの手が背中をさすり始めた頃には、すっかり夢心地になっていた。
もう半ば夢の中にいたと言っても過言ではない。

「そのまま眠ってしまって構いませんよ」

赤屍さんの優しい声が聞こえる。

でも、えっちしなくていいんですか?
とは聞きたくても聞けなくて。

結局、そのまま眠りに落ちてしまったのだった。


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