1/1 


赤屍さんのご飯は相変わらず美味しい。

ベッドに上半身だけ起こして座り、背中にクッションを挟んで貰った状態で食べる様子は、端から見たら病人のようだろう。
実際、いまの私は殆ど自力で動けないので間違ってはいないのだが。

「はい、あーん」

「あーん」

食べさせてもらった海老しんじょは、ふわふわした舌触りで、先ほどの肉じゃがと同じく、よく味がしみていて上品な仕上がりになっている。

もぐもぐ食べる私を、赤屍さんは柔らかい笑みを浮かべて眺めていた。
とても私を獣のように貪り尽くした男には見えない。

そう、貪り尽くされたのだ。
まさしく限界ギリギリまで抱かれた感じだった。

あの、欲望でギラギラ輝いていた瞳。
身体を揺さぶるリズミカルな律動。
肌を這い回る熱い舌と柔らかい唇の感触。
そして、何よりも、膣内を蹂躙していた硬く大きなものがまだ入っているかのような感覚。
それらを思い出しただけで、また濡れてしまいそうになる。

昨夜からのお風呂とベッドの往復で、身体は心地よい疲労感に包み込まれていた。

髪や身体からはシャンプーやボディソープの清潔な甘い香りがしているし、身体のどこにも不快感は残っていなかったが、何しろ体力の限界まで抱かれたせいで、思うように動けない。

そんな私に赤屍さんは甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。

「お味噌汁はいかがですか」

「ん…おいし」

合わせ味噌で作った豆腐とワカメの味噌汁を飲み、ふうと息をつく。
疲れた身体に染み渡るような優しい味だった。
毎日でも飲みたくなる、絶品のお味噌汁。

「赤屍さぁん、抱っこ」

両腕を伸ばせば、クスと笑った赤屍さんが柔らかく抱きしめてくれる。

甘やかされるのは好きだ。嬉しい。

今までそうだとは知らなかったけれど、赤屍さんとお付き合いするようになってからわかった。

だから、私達は相性ぴったりなのだろう。

「愛していますよ、聖羅さん」

「私も。愛しています」

唇を合わせるだけのキスも好き。
もちろん、舌を絡ませあう情熱的な口付けも好きだ。

あんなにみんなから恐れられている怖い人が、私にだけ甘くて優しいという事実に堪らない優越感を感じる。

普段はメスを握って容赦なく敵となった存在を切り刻む手が、優しく私の髪を梳いている。
それは何だかゾクゾクするような感覚だった。

「赤屍さん、好きです」

「私も愛していますよ。貴女だけを、心から」

自然と笑顔になってしまう。

赤屍さんのことはまだ時々怖いと思うこともある。
怖いけれど、好き。
まさしく、そんな感じだった。

恐怖と愛情は同居出来るらしい。

これも彼が教えてくれたことだ。

「さあ、食べたら少し休んで下さい。映画でも見ましょうか」

「あ、この前教えて貰ったスナイパーの映画が見たいです」

「良いですよ。一緒に見ましょう」

赤屍さんがまた口元に運んで来たほうれん草の白和えを食べる。
胡麻が効いていて舌触りもなめらかだ。
ああ、なんて美味しい。

こんなに幸せでいいのかな、とちょっとだけ不安になった日曜日。


  戻る  
1/1
- ナノ -