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三年前、心臓を患って開胸手術をした。
一ヶ月入院はしたものの、術後は良好で、いまは一年に一回定期検診を受けに病院に通っている。
今日も雪混じりの雨の中、病院に行ってきたところだった。いつもの胸のエコー検査と簡単な問診。
エコー検査は多少痛くても少し押し付けるようにして貰ったほうが早く終わるのだが、今日の人はただ表面を滑らせるようにしていたので上手く映らなかったらしく、いつもより時間がかかってしまっていた。

「なるほど。確かに、担当の看護師によって違いますからね。お時間をとらせて申し訳ありませんでした」

「いえ、大丈夫です」

今日はいつもの先生はお休みだとかで、初めて見る先生だった。
エコー検査の結果を見ながら丁寧に教えてくれる、親切な先生だ。

「まだ激しい運動はだめですか?」

「そうですね、内容にもよりますが」

「随分体力が落ちてしまっているので、ジムに通おうかなと思っているんです」

「そういうことでしたら、トレーナーと相談しつつ無理のない範囲でやるのが良いでしょう。心配ならいつでも連絡して下さい」

「ありがとうございます」

先生に渡されたのは、電話番号とメールアドレスの書かれたメモだった。
お礼を言って診察室を出た私は電車で帰って来たのだが。

「えっ」

先生からメールが来ていた。
私の体調を気遣う言葉と体力回復のためのストレッチのやり方などが書かれている。
優しい先生だなあと素直に感心した。

──次の週末のご予定はありますか。よろしければご一緒にアフタヌーンティーなどいかがでしょう。

と書かれていなければ。

これってやっぱりそういう意味でのお誘いなのかな。
悩んだ末に、是非よろしくお願いしますと返信した私もやっぱり同じくらい先生に惹かれていたのかもしれない。

あかばね先生に。


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