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「あの島全体がホテルなんですか?」

「そのようですね」

私達を乗せた船が向かっているのは、どこまでも青く透き通った海に囲まれた緑の島だった。

確かに、ここからでも宿泊棟とおぼしき建物が見える。

ビーチにはちらほらと人影があるが、混んでいるというほどではない。
これがプライベートビーチかと感心してしまった。

「パラセーリングなども出来るそうですが」

「いいです。お部屋でゆっくりしましょう」

赤屍さんの腕に縋りついてそう言えば、彼は優しく微笑んで「そうですね」と答えた。

「せっかくのリゾートなのですから、思う存分羽を伸ばしましょう」

少し遅い夏休みを利用してやって来たのは、南国のリゾートホテル。
島全体が丸ごとホテルの敷地だということだが、私達にはあまり関係ないかもしれない。

何故なら、私達はたっぷり愛し合うためにここに滞在するのだから。

「わあ、凄い!いかにも南国って感じがします」

案内された部屋は、南国のリゾートに相応しいエキゾチックな内装の部屋だった。

薄布で仕切られた室内を行ったり来たりしていると、ソファに座った赤屍さんが、ぽんぽんと自分の膝を叩いたので、歩み寄って彼の膝の上に座る。

「まずはウェルカムフルーツを食べませんか」

「はい、頂きます」

赤屍さんは陶製のカゴに盛り付けられたフルーツの山の中からぶどうを手に取り、一粒摘まんで私に差し出した。

「はい、あーん」

「あーん」

ぱくっと食べると瑞々しい果汁が口の中で弾けた。
甘い果肉をもぐもぐと食べると、またひとつ摘まんで寄越される。

「赤屍さんも、あーんして」

「はい」

クスと笑った赤屍さんの口にぶどうの実を運ぶ。
赤屍さんの唇が指に触れ、ドキッとした。

でも、こんなことはまだ序の口だ。

せっかくの南国リゾートなのだから、ゆっくり甘い時間を楽しまなければ。


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