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艶々した真っ赤な苺が乗った生クリームたっぷりのショートケーキが食べたい。
今日は誕生日なので、それくらいの贅沢は許されるはずだ。
それなのに、入った店全てでショートケーキが売り切れてしまっていたのはいったい何の罰ゲームなのだろうか。

しょんぼりしながら帰宅すると、家の電気がついていた。
あえて言わせてもらうが、私は一人暮らしである。そして、合鍵を渡している恋人もいない。
しかし、私はこの状況に驚くことなく玄関のドアを開けた。

「おかえりなさい、聖羅さん。今日も一日お疲れさまでした」

私を出迎えた不法侵入者は、ご丁寧に黒いエプロンを身につけていた。どうやら食事の支度をしていてくれたらしい。食欲をそそる匂いが部屋の奥から流れてくる。
まだ見ないうちから、テーブルに美味しそうな料理が並べられた光景が目に見えるようだ。

「赤屍さん、何度も言いますけど」

「お誕生日おめでとうございます。ショートケーキをホールで用意してありますよ」

「えっ」

「さあ、いつまでも玄関で立ち話もなんですから上がって下さい」

いや、あなたの家じゃないですよね?
そう心の中でツッコミながら靴を脱いで室内に入る。
まずは洗面所で手を洗い、それからにこにこしながら待っている赤屍さんについて部屋に入って行った。

「わぁ……」

綺麗に掃除がされて片付けられた室内にはハッピーバースデーと書かれた風船が幾つも浮かんでいた。
今朝畳んだまま放置していたはずの洗濯物が見当たらないのは、やはり誰かさんがしまってくれたからだろう。下着もあったのに。プライバシーも何もあったものではない。

そして、予想通り、テーブルの上には美味しそうな料理の数々が並んでいた。
中央には私が探し求めていたショートケーキがホールで置いてある。

「どうぞ、座って召し上がって下さい」

「えっ、あ、はい」

ここ私の家だよね?赤屍さんがあまりにも堂々としているので何だか自信が無くなってきた。
私はテーブルの前に座っていただきますをすると、早速料理を食べ始めた。
びっくりするほど美味しい。

「ケーキ、切り分けますね」

赤屍さんがショートケーキを切り分けてくれる。だが待って欲しい。いま、そのケーキナイフどこから出した?見間違いでなければ手の平からグプゥッて出てきたよね。

「どうぞ召し上がれ」

「いただきます」

私は細かいことを気にするのはやめてケーキを食べることにした。
艶々した真っ赤な苺が乗った生クリームたっぷりのショートケーキをフォークで一口大に切って口に運ぶ。

ああ……うんまい!
これだよこれ!これが食べたかったの!

「お気に召したようですね」

赤屍さんが微笑みながら言った。

「お誕生日おめでとうございます。貴女が生まれてきて下さったこの良き日が、貴女にとって最良の一日となりますように」

そうして、何やら大きな箱を取り出して私に渡してくる。

「これを。バースデイプレゼントですよ」

「ありがとうございます」

中身を見るのは怖いので、とりあえずお礼だけちゃんと言っておくことにした。
それにしてもショートケーキがめちゃくちゃ美味しい。がんがん食べられる。

「食べ終わったらシャワーを浴びてきて下さいね。脱いだ服は洗濯しますから、洗濯ネットに入れて洗濯機の中に入れておいて下さい」

だから、ここ私の家ですよね。

「パジャマは洗面所に用意してあります。お布団は干してありますから気持ち良く眠れますよ」

だから、

「まあ、脱がしてしまうんですけどね」

赤屍さんはにこやかに微笑みながら言った。


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