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いつもなら仕事に行くためにとっくに家を出ているはずの時間だけど、幸いにも今日は休みだった。
それはそれとして、私を腕の中に閉じ込めている赤屍さんのせいでベッドから出られそうにない。

「あの、赤屍さん、そろそろ……」

「赤屍、ですか」

僅かに不満を滲ませた声音に内心首を傾げる。しかし、疑問はすぐに解決された。

「昨夜は名前で呼んで下さったのに」

「あ、あれは……」

昨夜──行為の最中は、与えられる快感に身体ばかりか思考まで蕩けさせられて、乞われるままに下の名前を呼んでしまっていたのだった。

「蔵人、ですよ。聖羅さん」

甘やかなテノールを耳に吹き込まれて背筋がゾクゾクする。ダメだ。これはまずい。子宮にダイレクトにくる。
こちらの気持ちを知ってか知らずか、赤屍さんの手が優しく下腹部を撫でる。昨夜、彼の先端が届いていた辺りを。ゆっくりとした動きで昨夜の記憶を思い出させるかのように。

「蔵人と呼んで下さい」

「あぅ……」

甘く囁いた唇にそのまま耳を食まれて、びくんと身体が跳ねた。どくどくと心臓が拍動しているのがわかる。全身に送り込まれた血液が瞬く間に身体を熱くしていく。
下腹部を撫でていた手は更に下へと降りていき、いまでは脚の付け根の大事な部分に長くしなやかな指が潜り込んでいた。
くちゅくちゅと濡れた音が耳を打つ。
赤屍さんの指技は巧みだった。お腹の裏側にある感じる場所を絶妙な強さで執拗に刺激してくる。

「あ……あっ、んん」

「呼んで下さいますよね?」

それはもはや『お願い』ではなかった。

「く、蔵人さんっ」

「はい、何でしょう」

「も、指じゃなくて……」

朝から、だとか、昨夜もしたのに、だとか。もうそんなことはどうでも良かった。
すっかり気持ちよさを覚えさせられてしまったそこが、指よりも太く大きいものを求めて疼いていた。

「言って下さらなければわかりませんよ」

「く……蔵人さんの、おちんちん挿れてぇ」

直ぐ様入り込んできた大きなものにナカを擦り上げられただけで軽くイッてしまった。なんという快感。こんなものに抗えるはずがない。

「可愛い方ですね、貴女は」

そう笑う赤屍さんは実に愉しそうだった。


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