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皆アイツに殺されてしまった。未知の生物に寄生された、裏切り者のアイツに。
私がこの宇宙船の最後の生き残りだ。

泣きながら仲間の惨殺死体を避けて配電盤を開けると、予想通り配線の一部が切断されていた。
急いでケーブルを繋ぎ合わせ、接続させる。すると、ブーンという低い起動音とともに電気系統が復旧した。
これで開かなかったドアの向こうに移動出来る。

その時、遠くから大きな物音が聞こえてきた。アイツだ。

急いで辺りを見回す。一方通行の通路で逃げ場はない。
私はたったいま開くようになったドアを開けて部屋の中に飛び込んだ。
そして、通気口の中に隠れて息を潜める。

「聖羅……聖羅……どこにいるんだい?怖くないから出ておいで」

──ああ、最悪だ。

ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
嗚咽が漏れないように両手で口を塞ぎながら、私は深い絶望に打ちのめされていた。
アイツはああやって、生前の彼の声真似をして私を誘き寄せようとするのだ。
違う、違う、あれはもう私が愛した彼ではないのだと必死に自分に言い聞かせなければならなかった。
彼が悪いのではない、彼に寄生しているアイツが邪悪なのだ。あんな卑劣な生命体に負けたくない。

彼の足が見える。私を探している。

アイツはわかっているのだ。追い詰めた獲物がこの部屋に逃げ込むしかなかったことを。

せめて、悟くんがいてくれたら──
任務で遠方にいるはずの友人のことを思う。悟くんがいてくれたら、こんな悲劇は起こらなかっただろう。それが悔しくてならない。

「ここにはいないのかな?」

アイツの声が遠ざかっていく。

──そうだ、そのままここから出て行って

私の願いが通じたのか、ドアが開閉する音が聞こえてきた。アイツが部屋から出て行ったのだ。

助かった……。

詰めていた息を吐き出す。安堵のあまり、また涙がこぼれ落ちた。

「なんてね。出て行ったと思っただろ?残念でした」

アイツの顔が正面にあった。
しゃがみこんで通気口の中にいる私を覗き込んでいる。
最初から私が隠れていることを知っていてからかっていたのだ。この邪悪な生き物は。

「す、傑く……」

「逃げるなんて酷いじゃないか。私達は恋人同士だろう?」

にこやかな笑みを浮かべた彼の頭がばっくりと割れる。
ギザギザの歯がびっしり内側に生えたそこから赤い肉色をした触手が伸びてきて、


「ああっ、また死んだ!」

私はスマホの画面に表示されたGAMEOVERの文字を見て、ガックリと肩を落とした。
インポスターハイドというホラーゲームをプレイしているのだが、なかなか上手くいかない。敵に襲われて死んでばかりだった。

今回は自分の好きな漫画の設定をキャラに当てはめて遊んでいたのだが、やっぱり殺されてしまった。
こうでもしないと恐怖で心が折れてしまいそうだったので。
狙い通り没入感は最高だったが、いかんせんヘタレゲーマーの私ではクリアは難しそうだ。

「よし、もう一回!」

再度ゲームを始めた私の背後から、音も気配もなく現れた侵入者の白い手袋を嵌めた手が、私を包み込むようにして迫っていた。


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