今日は月曜日である。 本来ならば仕事に行くための支度をしているはずの時間だが、まだベッドから出られていない。 クッションに背中を預けて座り、優雅に朝食を味わっている最中だった。 それを運んで来た男はベッドの傍らの椅子に腰掛け、甲斐甲斐しく私の世話を焼いている。 「おや、もう食べられませんか?」 私を責めるでもなくそう言うと、男は──赤屍さんは、朝食の乗ったトレイを持って部屋から出て行った。 それを確認してから、私はベッドから抜け出した。 「……やっぱりダメか……」 ドアまでは辿り着けるのだが、そこから先に行くことは出来なかった。 ──左足の足首に嵌められた足枷と鎖のせいで。 室内には、廊下に出るドアとは別に、トイレと浴室に通じるドアがあり、そこまでは行ける。でも、それだけだ。 足枷を外して貰えるのは、唯一、お風呂に入る時だけ。しかも、それは赤屍さんが一緒に入って洗ってくれるので、逃げ出すことは出来ない。 「困ったなあ」 と言いつつも、実はあまり困ってはいなかった。 ここでの監禁生活がとても快適だからだ。 暖房が適度に効いているため、薄い寝間着一枚だけでも肌寒くはないし、何ならただ一日ベッドでごろごろしているだけで三食用意して貰える。 室内には私が退屈しないように、様々なジャンルの書籍が並んだ本棚や、大画面のテレビにブルーレイレコーダー、各種ゲーム機まで用意してあった。 引きこもるために必要な物はほとんど揃っている。 そして、夜毎繰り返される、『適度な運動』。 適度? いやいや、ハードでしょ、と思い直した。 赤屍さんは絶倫だからだ。 「お待たせしました、聖羅さん」 食後の紅茶を運んで来た赤屍さんが微笑む。 「さて、今日は何をして過ごしましょうか」 ここは本当に快適な檻の中だった。 |