明日も仕事だからと、いつもより早く就寝することにした。 幸いにも今夜は涼しく寝られそうだ、なんて思いながら目を閉じて睡魔に身を任せてからどれくらい経っただろう。 いつの間にか熟睡していたらしい。 ふっと意識が浮上したところで異変に気が付いた。 身体が動かない。 目も開けられない。 金縛りだ、と冷たい汗が全身に滲み出てくる。 どうしよう。 どうしよう。 どうすれば…… とぐるぐる思考が巡る中でふと気付いた。 誰かがすぐ近くに立っている。 誰か。とは誰か。 鍵は閉まっているのだから、考えられるのは泥棒か幽霊しかない。 その誰かが身を乗り出して顔を覗き込んできたのがわかった。 見られている。 必死に寝たふりをしてやり過ごすが、心臓がいまにも爆発しそうだった。 どれくらいそうしていただろう。 不意に気配が消えた。 完全に大丈夫だと確信してから恐る恐る目を開ける。 暗い室内には誰もいなかった。 震える手で枕元に置いてあったスマホを手に取り、電話のアイコンをタップする。 もうアドレス帳を見なくてもかけ慣れた番号に電話すると、幸いにも相手はすぐに出てくれた。 「もしもし、赤屍さん?実は、いま」 誰かが部屋にいたみたいで……と震えながら説明すると、赤屍さんは、おや、と笑った。 『起きていたのですね』 |