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「ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」

「そうですか。お気に召したようで何よりです」

食後の紅茶を飲みながら、ふと窓の外に視線を向ける。

窓の外には森林の緑が広がっている。
雰囲気の良いレストランだ。
観光客や別荘に滞在している客が来るのだろう。

私はゴールデンウィーク初日に現れた赤屍さんに運ばれて、彼の別荘に滞在していた。

丁度仕事が大変で辛かった時期ということもあり、何処か遠くへ連れ去って欲しいと願う気持ちが心の何処かにあったのだと思う。
そんな逃避願望を彼は一番幸せな形で叶えてくれたと言える。

今日は晴れたからと車でレストランに夕食を食べに来ていたところだ。
これがまた、いかにも別荘地のレストランらしく品のあるコース料理で、美味しかったけど少しだけ気後れしてしまった。

「そろそろ帰りましょうか、聖羅さん」

「はい」

お会計を済ませた赤屍さんと一緒にお店を出て車に乗り込む。

別荘には15分ほどで着いた。

「聖羅さん、お先にシャワーをどうぞ」

「ありがとうございます」

「それとも、一緒に入りますか?」

艶めいた言葉の裏にある意味を感じとってしまい、頬が赤くなる。

「おおおお先に失礼します!」

着替えを持って急いで浴室に向かう私の後ろから小さな含み笑いが追いかけてきた。

シャワーを浴びながら溜め息をつく。

どうせ後か先かの問題なのに、やっぱり恥ずかしさが先に立ってしまった。

見下ろす身体に幾つも刻み込まれた赤い痕。

それは、この別荘に来て以来毎日のように繰り返されている情交の名残。

なるべく意識しないようにして髪と身体を洗い終えると、浴室を出た。

リビングのソファに座って待っていた赤屍さんに声をかける。

「シャワーありがとうございました」

「いえ。では、私も入ってきますね」

立ち上がって浴室に向かう赤屍さんを見送り、ドライヤーを手に取って髪を乾かしていく。

今頃赤屍さんは……。

いけない。
想像してしまった。

ドキドキしながら待っていると、少しお酒が入っていたからか眠くなってきた。

寝室に行き、ベッドにぽすんと倒れこむ。

このまま眠ってはいけないとわかってはいるが、ついうとうとしてしまう。

「お待たせしました」

すぐ耳元で声が聞こえて、びくりと身体が跳ねる。

ボディソープの甘い香り。

赤屍さんが覆い被さるようにして耳元に唇を寄せていた。
小さな笑い声が耳元で蠱惑的に響く。

「さて、デザートを頂きましょうか」


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