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「おはようございます、聖羅さん」

「お、おはようございます」

赤屍さんの腕の中で目覚めるのは久しぶりだ。
いつもは目が覚めてもしばらくぼーっとして過ごすのだが、今日はシャキッと目が覚めた。

「もう少しこのままでも良いのですよ」

あわあわと起き上がろうとする私に、赤屍さんがクスと笑う。

「いえっ、もう起きます!」

赤屍さんの体温と匂いに包まれていたら心地よくて二度寝してしまいそうだった。

「では、朝食の支度をしますね」

「ありがとうございます」

よし、と気合いを入れて起き上がる。
まずは顔を洗うために洗面所に向かった。
もうすっかり朝方は寒くなってしまったので温水で顔を洗う。
歯磨きをして、髪もとかして、さっぱりした気分で部屋に戻ると、既に食欲をそそる良い香りがし始めていた。

自分一人の時は、朝は適当に済ませてしまうことが多い。
今朝のように赤屍さんが来ている時は、しっかりしたご飯を食べることが出来るから、正直ありがたかった。
持つべきものは料理上手な恋人である。

「出来ましたよ」

お急ぎモードで炊いたらしく、ご飯が炊けるのが早い。
その間に赤屍さんはおかずを作ってしまっていた。
化粧を終えたばかりの私は急いで食卓についた。

「いただきます」

「どうぞ召し上がれ」

何だか新婚さんのような会話だなあと少し気恥ずかしくなりながらも朝食を食べ始める。
箸で玉子焼きを取って食べる私を、赤屍さんはにこにこと微笑んで見守っていた。

「お味はいかがですか?」

「とっても美味しいです」

まるで料亭のだし巻き玉子だ。
他のおかずももちろん美味しい。
ほうれん草の胡麻合えに、茶碗蒸し。
お味噌汁と手羽先の甘辛炒めも、無事に胃袋に収まった。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

赤屍さんが洗い物をしてくれている間に着替える。
さっき洗面所にいた間に、今日着る服がコーディネートされて置かれていたので、迷うことはなかった。

「今朝は顔色も良いみたいですし、大丈夫ですね」

簡易診察をしてくれた赤屍さんは私の主治医でもある。

「行ってらっしゃいのキスをしても?」

「は、はい」

赤屍さんに腰を抱き寄せられてキスをされる。
行ってらっしゃいのキスにしては濃厚過ぎるそれに、あっという間に体温が上がった。

「おっと、失礼」

腰が抜けんばかりにぐったりとなっている私に、手早く口紅を塗り直して、赤屍さんが笑った。

「少々刺激が強すぎたようですね」

「も……赤屍さんのばかあ……」

「すみません。さあ、お弁当をしまって下さい。会社まで送って行きましょう」

ちょっと刺激的だけれども、こんな朝は素敵でいいかもしれない。


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